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冬 しゃびすぎです、あい


ここに12月26日0時すぎに産まれた娘がいる 手前はクリスマス 女の子にプレゼントを渡すという古今東西頭を抱える謎の解から逃れるため、父が「同じようなものだし誕生日を25日にしてくれない?」と八百屋の大根ぐらいのつもりで聞いたところ、立派なお医者さまは私の代わりにきちんと断ったらしい わが親ながら誕生日を値切るやついるんかい (カチリ) そう、そんな間抜けな冬から始まる旅

季節が人に手心を加えられるわけもなく、冬耐性のない日々が続く 末端冷え性の指先が常温に戻ることはない ニベアのボディミルクがなければ身体がパックリ割れてくる 首だけマフラーで固定されたゾンビが歩いている 残酷だ……もう少し……耐性とか……祝福とかあっても…… 仕方がない、冬に愛されたのは私じゃなくて母なのだ

ケチつけたわりに産まれたことをちゃんとお祝いしてもらってきたけども(父よありがとう)、なんとなく疑問なのが、誕生日って私がお祝いされるものかなーってこと 何かを与えられたのって母じゃないか 何かを奪われたのも母じゃないか 私ってはじめからなんにも持ってなくないか 真っ暗な円の中心 ここで2つのサイコロを渡される

12月26日 産まれる季節 何も持たずにマスを進み、破壊を尽くし、何も持たないままふりだしに戻る(サイコロを振るモーション)

台風とか大雨とか雷とか吹雪とか、世界規模で暴れられるとなんだかいつも産まれるど〜〜〜という昂りが抑えきれない それって世界側のテンション 世界のテンション、生理痛みたいな感じでダダ下がってたりしてねー これは私側のハラスメント 突如雷が鳴る 怒りましたか あれは寒くなるほど酷くなる父の静電気との勘違い

冬がよく似合う女だった 雪のように白い魔女が産んだのは真っ黒けの私 真っ赤な太陽がいつまでもいつまでも焼き付けてジリジリ焦がした一点 あの落陽! 皆既月食って虫眼鏡で焦がした穴みたいだよ そんな嘘だってここでは真でまかり通る 午前0時の針の音 白い女は輪郭が美しく、焦げたにおいの残る私はすっぽりがらんどうに隠されたまま……

誕生日がくる イエス・キリストの誕生をお祝いして(誕生をお祝いされるのなんてこの人くらいじゃないか、と思いつつ)年末に向かうみんなの気持ちの中休み 祭りのあと
手前は年始 間抜けな孤独をたたえた父の誕生日は中休みで忘れられがちだと溢していた 祭りのあとだぜ、私たち

雪の上から焼かれて露わになる黒星 真冬の恋人、2人 きりの甘い物語の結末がここにいる そして私の物語では私が主人公なのだ 歩みを進める 世界って1つだけとは思えない イザナギとイザナミがセックスをして、物語の主人公の子供が産まれる それを繰り返す 分裂を繰り返す 世界人口って今何人だろう 私たちは1つの世界になんていない、産まれた分だけ割られた1010111000100101110100分の1とか 何処か 手の届かないところ…… いつかの午前0時の針の音より、ニベアのボディミルクがパックリ割られた地上を潤す (カチリ) 分子が2 「ここで2つのサイコロを渡される」

誕生日っておめでとうでいい
道理の通らぬ謎に挑んだ
父の愛を守るため

12月26日は母に還る
裏側の謎の解を
私に委ねるため

ふりだしに戻り大穴の前で歩みを止める
誕生日っておめでとう? 母におめでとう?
ベショベショに湿った地面を見て気の利いたセリフを言える人がいたら見てみたい 寒さで呂律も回らないし

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