#0054【マリー・ルイーズ(オーストリア、19世紀前半)】

1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。

ナポレオンの妻たち特集の最後はマリー・ルイーズです。

彼女は1791年12月にオーストリア皇帝フランツ1世の娘として生まれます。フランス王妃マリー・アントワネットの甥の娘にあたります。幼少期にナポレオンの軍隊が迫ってきたため、ウィーンのシェーンブルン宮殿から二度避難しており、ナポレオンを「食人鬼」と教わって成長しました。

ナポレオンがジョゼフィーヌと離婚し、ヨーロッパの王室から妻を募集している話を聞いたときには「次に妃になる人に心から同情するわ」と友人に書き残しましたが、なんと自分が嫁ぐことになりました。1810年4月のことで彼女は18歳でした。輿入れに際してはマリー・アントワネットの時に準じた壮麗で華美な行列を整えてウィーンからパリへと向かいました。

結婚後のナポレオンとマリーの関係は非常に良好で、マリーは「私はナポレオンを少しも怖いと思っていません。むしろナポレオンが私を怖がっているのではないかと思い始めています。」と友人に手紙を書き送っています。

事実、ナポレオンは彼女の機嫌を損なうことを異常なほど警戒します。そして、ナポレオンに待望の懐妊の知らせが届きます。ナポレオンは大喜びをして、彼女に何か不足はないかと尋ねます。マリーは即座に「前の皇后のところに行くのをやめてください。そしてパリに住まわせているポーランドの愛人を追い出してください。」と要望します。ナポレオンは彼女の要求をのみ、自分の旧宅に住まわせていたマリア・ヴァレフスカにワルシャワへ帰るように命じました。

マリーの独占欲が強いのか、ナポレオンがクズなのか。

1811年3月に遂にナポレオンが求めてやまなかった嫡子が誕生します。生まれた男子はすぐにローマ王に任じられました。マリーは大変な難産の末での出産だったせいか、ローマ王への愛着が薄かったと伝えられています。

ナポレオンは彼の築き上げた大帝国をより強固なものとするべくイギリスとの闘いに進みます。フランスは海軍力ではイギリスに勝てないため、上陸作戦はあきらめ大陸封鎖令をヨーロッパ各国に履行させ、イギリスとヨーロッパ大陸の交易を禁じます。イギリスに対して経済封鎖を狙ってのものでしたが、逆に大陸側が疲弊することになりロシアは秘密裡にイギリスとの交易を復活させます。

これに怒ったナポレオンは1812年にロシア遠征を断行、結果ロシアの雪と冬にフランス軍は惨敗を喫し、ナポレオンも命からがらパリへ戻りました。1813年にはライブツィヒの戦い(諸国民戦争)でも敗れ、1814年には遂にパリも連合軍の手に落ち、ナポレオンは退位してエルバ島へ流されることになりました。

マリーとローマ王はパリ郊外に避難をし、そのままオーストリア軍に保護されました。マリーはナポレオンのエルバ島での処遇改善とローマ王への領地割譲を父であるオーストリア皇帝フランツ1世に頼みますが、父は決して頷きませんでした。

筆まめなナポレオンはエルバ島へ流されてからマリーに対して幾度となく手紙を出しますが、それらは全てマリーの手許に届く前に処分されてしまいます。ナポレオンはマリーとローマ王がエルバ島にやってくるものと信じ、マリア・ヴァレフスカとアレクサンドルがやってきても3日で追い返す仕打ちをします。

一方のマリーは温泉療養を父に進められ、その地に同行した貴族と男女の関係となりました。ナポレオンが一時フランス皇帝に復帰すると動顛しますが、僅か3か月で失脚すると安堵し、平穏な暮らしに戻ります。

この間、ローマ王は母との交流がほとんどなく、また父ナポレオンの記憶からも遠ざけられて育てられ、胸を患い1832年に若死にします。マリー・ルイーズはその後、1847年12月に56歳で没します。

彼女の死の翌年1848年にフランスで再度革命がおこり、ナポレオンの甥が大統領となりました。そして1852年にはナポレオン3世として皇帝に即位しました。ナポレオンの実子ローマ王をナポレオン2世と数えての名乗りでした。

以上、今週の歴史小話でした!

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発行人:李東潤(りとんゆん)

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主要参考文献等リスト:

https://note.mu/1minute_history/m/m814f305c3ae2

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