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ユメノキロク

これは、20年以上前に見た夢

森の奥深く、霧に包まれた中に
とても大きな古びた屋敷が建っていて
側には崖があった

その屋敷は学校で
少し離れた場所に寮があった

私はその学校の生徒の1人
15歳位の女の子だった
白いナイトドレスを着てベッドに腰かけながら
窓の外を眺めていた

寮は個室ではなく、大応間のような
大きな暖炉のある部屋

小さな鉄のベッドが並べられているだけで
眠る時以外は学校に居た

私はいつも、窓の外に見える
崖が気になって眠れなかった

足音が近づいてきた
見まわりの時間らしい
私は布団をかぶり、寝たふりをした

眠れない生徒は
保健の先生のような女性に
睡眠薬入りの注射を打たれる

見まわりが終わったのを確認し、
また窓の外を眺めた

すると、出て行ったはずの女性が
忘れものをしたのか部屋へ戻ってきて
起きている事に気づかれてしまった

「まあ。まだ起きていたのですか」と、
注射器をとり出し私の左手に針を刺した

私はすぐに眠りについた


この学校では、定期的に生徒が卒業して
故郷へと帰っていくらしい

学年ごとではなく、テストに合格した
生徒の中から1人 だけ選ばれ
その日はその生徒の為の宴が開かれ
皆で夜に送り出すという決まりだった

その夜は決まって下弦の月

この学校には妙な規則が多く
私は不信感を抱いていた

それに、あの崖からは何か良くないものを感じる


翌日の夜もまた、眠れず窓の外を眺めていた
すると、2人の生徒が近づいてきた

その2人は姉弟で、お姉ちゃんは茶髪
片側でまとめたおさげスタイル
弟はブロンドで、5歳位は年下に見える
髪の色は違うけれど、同じ瞳の色をしていた

「見まわりが終ったら声をかけるから
寝たふりをして」と言われた

2人も私も寝たふりをして
見まわりが終わるのを待った

女性が見まわりを終え、部屋を出ていくのを
確認したところでベッドから起き上がった

2人の方を見ると、カーテンの側へ
行くように合図をしてきた

私と2人の姉弟はカーテン裏で話始めた


お姉ちゃんの話によると、弟はいつも
あの崖からうめき声のような、恐ろしい声が
聞こえてきて眠れないというものだった

その弟が、私がいつも眠れずに
学校の方を眺めている事に気づき
もしかしたら私も良くないものを感じとって
いるのではないかと思い、話がしたかったのだそう

けれど、弟はひどく人見知りな為
お姉ちゃんが代わりに話していた

私は、この学校に対する不信感や
崖からなにか悪いものを感じる事を伝えた

すると弟は、いつも以上にひどく怯えて
眠れなくなるのが決まって
卒業生が学校を去る日
下弦の月の日だという事を聞いた

崖、下弦の月、卒業生
何らかの関係があるとみて、3人で調べる事にした

皆がお風呂へ行っている間や
眠っている時間帯に、3人で分かった事や
気づいた事を報告し合いノートにまとめた

そして、学校に誰も居なくなる時間帯が
ある事が分かった。それは、
卒業生を送り出した後だった

その日の見まわりが終わった後
寮を抜け出し学校に忍び込む作戦をたてた

そして次の下弦の月の夜
作戦を実行する事となった

嬉しそうな卒業生の前には
豪華なご馳走が並び宴がはじまった

弟は既に何かを感じとっているのか
気分が悪そうなので、作戦を中止するか
話し合いをした。その結果お姉ちゃんと
私が2人で作戦を実行する事になった

まず、いつも通り宴が終わり
卒業生はみんなにお別れをして
先生達と大部屋を出て行く

生徒たちは全員寮へ移動し、入浴後すぐに就寝
その後、見まわり。女性が寮から出て行くと

耳をふさぎ怯える弟を残して、私達2人は学校へ

丁度、卒業生と先生達が学校の外へ出たところだった

お姉ちゃんは先生達の行動を監視し
私は校長室に忍び込み資料等を探ることに

かろうじて、校内の明かりはほぼ点いたままだった

罪悪感はあるものの、絶対に何か
手がかりを見つけて解決しないと!
という意思にかられていた

目に見えない誰かに操つられているような感覚だった


そして、古い書物やファイルを見つけた

怪しい魔方陣のような絵が描いてあったり
悪魔や呪文 死の世界について書き記してある

ファイルにはこれまでの卒業生の写真や
名前が載っているプロフィールがつづられており
赤い✕印がつけられていた

今夜去った卒業生の顔写真にも✕印が‥

そして次のページをめくると、
お姉ちゃんのプロフィールがはさんであった

次の下弦の月の日には
お姉ちゃんが卒業するという事を察した

他にも手がかりがないか探ろうとすると
お姉ちゃんが校長室へ呼びに来た

「大変なの!早く来て!」と言われ
外へ急ぐお姉ちゃんの後を追った

すると、崖の辺に灯りが見えた

崖のふちに立つ卒業生と
その周りを囲み、追いつめている先生達の姿
先生達は 手に松明を持っている

何やら呪文のような言葉を
唱える校長先生の姿も見える

私達はすぐさま木の影に隠れた

「どういう事?先生達は何をしているの?」と
状況が分からず、ただ見ている中
卒業生の助けを求める声‥

とっさに走り、学校の非常ベルを鳴らした

「何事だ!!」と騒ぐ先生達

同時に卒業生の悲鳴が響いた

先生達が学校内に戻ってくるので
とにかく急いで寮へ戻った

私とお姉ちゃんは息を切らしながらトイレへ

「やっぱりこの学校はおかしいんだ!
あの卒業生は一体どうなったの?
死んじゃったの!?」とお姉ちゃんは
ひどく取り乱している

私も震えを抑えながら、お姉ちゃんの手をとり
「とにかく今は先生達が見回りに来るかも
しれないから、弟の元へ戻って
寝たふりをするの。いい?」と言って
トイレを出て大応間へと戻った

大応間で1人、眠らず待っていた弟は
お姉ちゃんの顔を見るなり駆け寄った

その時、先生達が寮に入ってくる音が‥

急いでベッドに入り、寝たふりをした

先生達が1人1人の顔をライトで照らしていく

鼓動が早くなっていく

次は私の番‥

恐くて震えが止まらず、もうダメだと思っていると
また学校で非常ベルの音が鳴り響いた

「学校にまだ居るんだ!探せ!」と
慌てて学校へ戻って いく先生達

私とお姉ちゃんは、誰が鳴らしたの!?と
驚いている中、 弟は私のうしろを指さし
「あれ‥?戻ってきたの?」 と言った

振り返ると、哀しい顔をした
先程の卒業生の霊の姿があった

学校の非常ベルを鳴らしたのはその霊らしい

私はお姉ちゃんを守る為にも
絶対にこの儀式を終わらせる事を誓った

そしてその夜、眠っている皆を起こし
今夜起こった恐ろしい出来事について話した

聞く耳を持たず、卒業が待ち遠しいと言う生徒や
私の頭がイカれていると笑う生徒もいたけれど
多くの生徒は協力してくれる事になった

その後がすごく気になったけど
目が覚めてしまった

後日、あの姉弟が夢に出てきた

もうあの学校の制服姿ではなかった
2人共満面の笑みだった



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