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奇妙な、かなしばり

私は昔から、
寝入りばなに「かなしばり」になることがある。

頭の中では「これは身体と脳が別々に云々...」と
分析してみるものの、厄介なことが起きることもしばしば

かなしばりが起きる時は決まって
「あっ、来そうだ..」と感覚でわかるようになってきている。単純に身体が動かないというだけなら何の問題もないのだが、かなしばり中は必ず
「誰か」あるいは「何か」が動けないでいる
私に向かって、忍び寄る気配がする。

2階で寝ているとすれば下から階段を上がってくる足音。音はだんだんと近づき、やがて寝室のドアを開ける。リアルにドアを開ける音がする。動けないでいる私を覗き込む、稀に全身に鳥肌が立つ。

その「何か」あるいは「誰か」は
その時々によって違う。

たぶん。

ある時は家族のようなもの、
あるときは全く知らない存在。
同性だったり、異性だったり、異物だったり、

「もし、そうだったら怖いなぁ」という
頭の中の想像が夢のようなものを見せているとしたら、私の想像力もまだまだ捨てたものじゃない。

枯れてはいないのだ。


ーー昨晩のことである。

翌日の仕事に備えて早めに就寝したのだが
横になるや否や、全身が瞬く間に弛緩し、
力が全く入らなくなる。すると足先の方から
サァーっと、鳥肌。身体は暖かいのに寒気。
「これはアレですね。嫌だね嫌だね」と思い
待ち構えていると...

その「何か」あるいは「誰か」が

ベッドに乗ってきた。覆いかぶさるように。

顔を私の寸前まで近づけてくる。
吐息を感じる。確かに。

アルコールとタバコの臭い、そして
女性特有の甘い、吐息。

妻はもうタバコをやめている。
お酒は数か月に1度しか飲まない。
チューハイ1缶で事足りるくらいだ。

あきらかに妻ではない。

もはや、人かどうかも定かではない。


おぼろげで なまめかしい ゆらゆらとした
あまく あたたかい ふあんていな なにか


恐怖や違和感のない、かなしばり
前例のない奇妙な、それ、に戸惑いつつも
感謝してみたりもした。

不思議な夜。


関係性は不明だが、その日の深夜3時ごろ
猫が階下から甘えた声で呼び続けていたので
ベッドから降り、猫の毛づくろいをしてあげた。

ゴロゴロゴロゴロ......

まさかね


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