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朝の逆転 (ショートショート)

 わしは毎朝の陽ざしを浴びながら茶を飲む。しかし、その習慣が崩れた。
 長い夜が続き、次に白夜、その次に夕焼け、夕立ちを経て視野のすみに立派な積乱雲が湧く青空になる。それから朝になって、朝焼けになってだんだんと朝日が沈んで夜に…わしを含め皆その理由が不明のまま暮らしている。
 若者たちは皆戦死して残ったのはわしら老人だけ。
 わしのハゲが治ったのか毛が生えてきた。次に白髪が黒髪に戻ってきた。ネットが使えないので口づてだが、皆そうなった。婆さんたちはシワが消えて喜んでいる。どうやら人類は若返るようだ。
 若返りによって体力が回復し、田畑を耕し収穫しようとしたら、植物も若返ったのか実りがない。
 若い人々は死に絶えたが、老人から若くなった人たちも、いずれ赤ちゃんになって動けなくなる。事態の惨さと将来をわしらは悲観しているが、どうしようもない。核爆発ですべてに染色体異常を起こしたのだろう。
 朝の習慣も壊滅した。愚かなり人類。

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