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文学トリマー (バレエショートショート)

 藍は、読書感想文のコンテストに学生部門で佳作をとった。バレエでは関係ないだろうと黙っていた。しかし同じクラスの井伊野が奨励さんにしゃべったらしい。
 奨励さんは作家志望なので藍を見かけて「おめでとう」 と祝福してきた。藍は照れた。

「適当に書いたら受賞しちゃって」

「適当に書いて受賞? 藍くん、その文章を見せてくれ」

 学校帰りだったので、バッグの中にあった原稿用紙を見せたら奨励さんは真剣な顔で読んだ。
「君には才能があるのかも。次は大賞を狙いなさい」
「ありがとうございます。月末のバレエコンクールでもその調子でがんばります」
「バレエと文学はどちらも芸術だが根本的に違うぞ」
「どちらも頑張ります」
「両方とも頑張れるのはきみが若いからだ。バレエは基礎練習あるのみ、これは妻が指導する。しかし文学はひたすら推敲だ。良かったら手伝うよ。ワンコのトリマーのように文字を刈る。私は君がうらやましいぞ」

 奨励さんは一気に老けた顔を見せた。



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たらはかにさまの企画に参加中です。
今週のお題は「文学トリマー」 です。




たらはさんは、本日は文学フリマ東京38にご出演?です。
2Fに確実にいらっしゃるので、会えますよ~!
先着順におまけとして、たらはさん作品のバレエ文学出版の
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文学フリマ京都8での紹介(こちらは終了しました)


ありがとうございます。