感想文部  (ショートショート)

 作家養成大学に男がいた。感想文部教授と名乗りプロもやり込める。マスコミにもてはやされ増長していた。学生の作品もけなすので自信を失くした者が退学する。学長が諫めてもダメで、助っ人を呼ぶ。長身で全身黒づくめの服装、口元には薔薇の花。
「詩人のH氏だ」
「H氏?少坊から賞を総なめにした…すごい美青年になったな」
 
 H氏に男を会せた。H氏は薔薇の花にキスをすると男の口元にそれを押し付ける。間接キスだ。
「我に従え…頭が高い」
「何だと」
 H氏は見かけによらず力があり、男をねじ伏せて己の胸元に引き寄せる。そして甘い声で囁く。

「ここで一生無用な恨みを買うつもりか」

 男はうっとりと目を閉じた。H氏の魅力にやられたようだ。

「我は詩人より政治家になりたい。お前の舌鋒鋭い理論を欲する。我に従え」

「やらせてください」

 一年後、H氏は政治家デビューを果たす。男は元感想文部教授としてライバルの政治家をやり込める。学長は適材適所だと感心した。

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