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40.かすかに感じた淡い春

今日、クリスマスイブを迎え、いよいよ週末明けると年末ムードが色濃くなり、なんとなく忙しない、そわそわ焦ったような気持ちになる。毎年繰り返されることなのに、ちゃんと毎年そわそわする。特に小さい頃、新しい年を迎えることは、まったく新しい世界に飛び込むような、大晦日にはそんな壮大な気持ちになっていた。それを繰り返すうちに、大晦日も元日も、ついに日常の延長であることを実感しながら、それでも大人になった今、新しい年を迎えることというのは、なんとなく背筋が伸びるのだ。

先日、冬至を迎えた。
私は季節の境目として定められた、春分・夏至・秋分・冬至という、きっぱりとした日が好きだ。季節をグラデーションにしたような、二十四節気の分け方も好きなのだけど、前者の境目にあたる日は、その次の日からは次の季節への準備が始まっていて、徐々に移行していくという宣言がなされたようで、心新たになる。冬至にしても、その翌日から夏至に向けて、実際に日が長くなる。人間や動物の視点であると、これから一月、二月と寒さは厳しくなるのに、この季節はちゃんと春を迎える準備を進めている。

休みの日、郵便局への用事を済ませるために、ほぼ部屋着にコートを羽織り、マフラーをぐるぐる巻きつけ、マスクを装備して、外出した。お化粧ましてや眉毛を書いていたかも忘れてしまった。音楽を聴きながら寒さを紛らわせ、足早に郵便局へ向かう。その帰り、マスク越しにふと、春のような匂いを感じた。人がいない通りだったので、マスクを少しずらして、すぅっと空気を吸ってみる。週末には大寒波だとニュースが報道しているというのに、吸い込む空気の中に春のまるまるとしたやわらかい空気を感じた、ような気がした。気のせいといえばそれまでだけど、きっと、おそらく、どこかで春の準備が始まっている、衰えた野生の感が少しは働いたようだ。

つい先日、ホットカーペットを設置し、暖房を付けるためにエアコンの掃除をし、雪に備えた長靴を買い、いそいそと冬支度をしていたのに。
まだ遠く、淡く、かすかな春の気配を感じてしまったからには、毎日毎日が春に向けて前進しているような気持ちになった。もう少しだけ冬を楽しみたいけれど、寒さが深まれば深まるほど、春が近づいている。
季節って、不思議。

おわり

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