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小説『覚醒』

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2020.3.11始動。2023.3.11終結。怪異とたたかう霊能者一家のおはなし。眠れぬ夜にマドロミを。
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2023年1月の記事一覧

覚醒illegal #3

覚醒illegal #3

由荼(ユダ)ちづるが助産師を志し始めたのは、17の女学生時代だった。
きっかけとなったのは、当時テレビで放送されていた育児のドキュメンタリー番組を観たことだと本人は記憶している。命が誕生する瞬間に感銘を受け、自分もその場に立ち合いそして手助けをしたいと当時の由荼ちづるは色めきだっていた。自身は結婚や家庭に興味は無かった。色恋沙汰にもどこか疎く、恋人を欲する気持ちもロクに生じず、その為他人に時間を割

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覚醒illegal #4

覚醒illegal #4

「霊能力のレベルを低下させたくなければ、肉体の純潔を維持せよ」
これは、呆国随一の霊能者である虚子が、四人の弟子に繰り返し伝えてきた教えだ。
肉体の純潔とは即ち、力を死霊や妖魔でないものには向けず、己の手を殺生の血で染めないこと、そして、異性あるいは同性との交わりを避け、貞操を捨てないこと、である。
教えを破り、肉体の純潔を失った霊能者は、力を衰弱させ廃人と化すか、穢れに魅入られ魔人と化すか。二つ

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