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将棋で名人になる方法!

将棋の本流をたどると、古代インドのチャトランガというボードゲームに突きあたる。
チャトランガはインドから世界各地に広がったらしく、例えば西洋ではチェス、中国ではシャンチー、タイではマークルックとして、それぞれ独自の進化を遂げた。

チャトランガやその亜流のような、将棋の原型となるものがいつごろ日本に上陸したのかは明らかになっていない。
チャトランガがそのままインドから伝わったという説もあれば、中国を経由してシャンチーとして伝わったという説もある。
最も早い時期では6世紀、あるいはそれより後の時代に、日本に伝来したとされる。

つまるところ、謎が多い。
伝統と格式の色が強い将棋というゲーム。
しかし蓋を開けてみると、意外とその起源はミステリアスなのだ。

裏付けが取れている考古資料としては、11世紀のものになる。
そのころは、「平安将棋」と「平安大将棋」なるものが時流だったらしい。
駒の数は現在の将棋よりも多かったらしく、また、持ち駒の概念があったりなかったり諸説ある。
13世紀ごろには、平安大将棋よりさらに駒数を増やした「大将棋」なるものが台頭し、その派生として「小将棋」も生まれた。
もはやなにがなにやらわからない。
と、いうことで、複雑になりすぎたルールを見直し、簡略化して誕生した「中将棋」が現在の将棋にかなり近い原型とされている。
とはいえ、このころはまだ庶民に広く親しまれてはいなかった。

ではいつごろ、日本において将棋が人口に膾炙しはじめたのか。
江戸時代だ。
この時代、将棋をモチーフとした川柳が史料として多く残っており、現在よりも日常に将棋が根付いていたとされる。
余談だが、今に続くすばらしい文化や芸術は、だいたい江戸時代に大成している。
江戸で繁盛していた出前文化「棒手振り」などは、今でいうウーバーイーツの原型だろう。

1612年、江戸幕府は将棋の達人「大橋宗桂(おおはしそうけい)」に、「将棋所(しょうぎどころ)」という称号を与え、手厚く称えた。
徳川家康は囲碁や将棋が好きだったらしい。
以降、大橋家本家と大橋家分家、伊藤家の御三家が将棋界を牽引することとなる。
当時、御三家の中で最強の者が、名人や将棋所を名乗ったとされている。
今となっては実力勝負で名人が決まるが、元来は世襲制度だったのだ。

1612年に江戸幕府が大橋宗桂に俸禄を授け、これをきっかけに彼が初代名人となったのであるが、なんとなんと、この世襲制度は昭和13年つまり1938年に「実力名人戦」で木村義雄が名人となるまで、326年も続いたことになる。
将棋とは、江戸幕府お抱えのお家芸であり、名人の繰り広げる将棋は伝統芸だったのだ。

現在、将棋のタイトルといえば8つある。
各タイトルにはランクがあり、1988年に「竜王戦」が発足してからは竜王が1番の位なのだが、それでも名人は圧倒的に伝統と権威があるので、竜王に次ぐ位にある。
竜王と名人というのは、将棋界では別格なのだ。
ちなみに、16連射でおなじみの「高橋名人」は、ハドソンの社員という立場から一気に名人位についた強者で、名人を冠する者のなかではずば抜けての異端児ということになる。

さて、ここでは特別に、名人になる方法を述べよう。
江戸時代の世襲制度がなくなった今、誰だって名人になれるのだ。
伝統と権威を手にし、名人ライフを謳歌する権利は、大衆に開かれている。

まず、プロの「順位戦リーグ」に参加する必要がある。
この順位戦リーグは、A、B1、B2、C1、C2の5クラスあり、最初はC級2組からスタートし、年に1度優秀者が昇級していく制度となっている。
そのため、まずA級に上がる必要があり、A級リーグで優勝すれば名人に挑戦する権利を得られるのだが、名人挑戦まで最短でも5年かかることになる。
さらに、プロの順位戦リーグに参加するために、プロすなわち4段に昇段する必要があるが、そのためには「奨励会」に入り、そこで26歳までに3段リーグを勝ち抜けなければならない。
奨励会に入り、3段リーグを勝ち抜き、プロの順位戦リーグを勝ち抜き、A級リーグで優勝し、そして名人に7番勝負で勝てば、晴れて名人となれるわけだ。

といっても、これはいかんせん過酷だ。
だから、私がおすすめする方法は、コネ。
もう、コネしかないと思う、本当に。

まずは、日本将棋連盟のお偉いさんと寝る。
何人かと寝て、うまいことやれば、きっと順位戦のA級リーグに忍び込める。
次に、名人戦を共催している毎日新聞社と朝日新聞社のお偉いさんとも寝よう。
そうすれば、あら不思議、7番勝負出場の裏口ルートができあがっている。
いよいよ名人との7番勝負だ。
これは、間違いなく、1勝もできない。
どうあがいたって勝てない。
ここまでおすすめしておいて、ごめん。
コネでいけるところまでいっても、実力がないのはいつかバレるんだよ。
それに、名人なんて肩書きだけあっても、そんなの虚しいだけ。

だから私は、大きな声で言いたい。
簡単に寝るのはよくない!

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