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読書ノート 「三体Ⅲ 死神永生(上・下)」 劉慈欣

 2021年5月に日本で出版された「三体」シリーズ3部作の完結版。実は完結版から読んでいる。
 これが中国SFであること、そして全世界で支持され、各国の賞を総なめしていること、グレッグ・イーガンばりのハードSFである上に、素晴らしいストーリーテリングであること、などが事前情報であった。

 3作目の「死神永生」では、三体世界と「暗黒森林」抑止で束の間の停戦状態の中、主人公の程心が、雲天明から恒星をプレゼントされたことで巨額の資金を得るところから話が始まる。その後の展開はスリリングでスピーディ、目まぐるしく動く話についていけないというのではなく、次はどうなるのかと焦燥感すら覚える驚きの場面転換で、読者を飽きさせない。

 そして高度なSF的アイディアが惜しみなく投入され、読者の知的好奇心をおおいに満足させる。スペースオペラと物理学的知見、核パルス推進、時間と次元のSF的駆使、雲天明の暗号たる「おとぎ話」の解読、「水滴」や三体世界のスーパー微細コンピューター「智子」、そして別世界の「歌い手」が操る最終兵器「紙切れ」、四次元の「墓場」、「小宇宙#647」など、壮大なスケールのアイディアが満載である。

 小松左京や、イーガンのような壮大な世界観の構築もすごい。長い時間軸を見るとコードウェイナー・スミスの「人類補完機構」シリーズにもイメージが被るがそれよりファンタジスティックではなく、もっと現実的な世界である。にもかかわらず、最終的には宇宙の終わりまで見せつけるその跳躍力には、だれもが感嘆してしまうだろう。現在NETFLIXで映画化が進行中。どのような映像になるか今から楽しみだ。

 書き手としてここまで書けるかといわれれば、現在は書けない、というしかない。同じことを出来るとも思わないが、ここまで飛び抜けてもいいんだ、ここまで飛び抜けれるんだという、希望みたいなものを感じる、良い読書体験でした。


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