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読書ノート 「イスラームから見た西洋哲学」 中田考

 
 一気読みできました。井筒俊彦からイスラム神秘哲学やギリシア哲学に入った身としては、良く言えばまとまっている、悪く言えばアウトラインのみの内容ではあるが、いやいや貶す必要はない、この分野できっちりしたものを書ける人は大変少ないのであるから、ありがたく承ろうと思います。特に、第一章から第二章にかけての、古代から中世へのイスラム哲学と西洋哲学の関係については、大変良く見通されて書かれている。 
 この視点、いわく、「中世の西洋哲学はギリシア哲学を無視し、キリスト教の狭い宗教思想世界で袋小路にあるなか、実際はイスラム世界でギリシア哲学が受け継がれ、成長していたのだ」ということを、もっと世に知らしめるべきだと思います。付け加えて言うなら、イスラム世界でギリシア哲学はアヴィセンナとアヴェロイスで頂点に達し、コーランを極とするイスラム教との合流で、更に進化した幽玄の境地を持つ新たな哲学に進化する(と井筒はいう)。


 著者の「これから世界を救うのはイスラム的思想だ」という主張は短絡的に見え(あまり説明してませんね)、直ぐには了解しかねる部分ではあるが、もう少し噛み砕いて説明すれば、賛同する人も増えるのになあとも感じました。急に「イスラム絶対!」的な言い方になるのは損してます。
 とはいうものの、イスラム哲学世界についての理解を深めるうえで、また井筒の著作を読む上での補助線になること間違いなし。つべこべ言わず一読すべし。

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