見出し画像

インド細密画を脳内リアル展開するためのインド映画

京王線の扉窓に貼られている広告シールがカワイイ府中市美術館の企画展『インド細密画』

華やかな色と装飾の豪奢さ、みょうちくりん(に見える)な神さまやキャラクターがいる広告だけでも、絵やイラスト好きな人のハートをつかみそう。

インド細密画はイスラム勢力が強くなったムガール帝国やラージプートあたりの時代に描かれたものが多くて、王様と妃たちの肖像画や神話、展示にはなかったけどアーユルヴェーダ医療の食物、果物やハーブの絵なんかもある。

日本だと江戸時代くらいから明治にかけてなので、江戸時代の肉筆画、仏画とか、絵巻物、殿様の肖像画のお軸になってるような絵のポジションが、インドでの「インド細密画」かなあと。

衣類や装飾品の柄の細かさと可愛らしさが、ぱない。

ムガールおじさんは一輪の花を持ちがち。
イケメンおじさんと花はなかなかよいけど。


歴史文化の研究、時代劇なんかの装飾、扮装の時代考証は絵画に描かれている絵から推測されて、その時代や地域の特色などに分類して、まとめられて現代に至っている。

日本のものはTVの時代劇、歌舞伎などの伝統芸能、お笑いでも着物を見たりするし、ヨーロッパの方はギリシャ・ローマから中世貴族、ファンタジーに至るまで、沢山のアニメや漫画の舞台で使われているので、「なんか知ってる」というように、わりと身体感覚的に馴染みがある。

インド文化。

アーユルヴェーダ、ヨガ、カレー、仏教とかそこそこ興味もあるけど、インドでイスラムが隆盛してからの文化じゃない。

ムガール期の歴史文化に詳しくないのに、絵の画面からの情報だけじゃなくて、その風景をサラッと身体に馴染ませてイメージできるのはなんでだろう?と、インド細密画の展示を見ていて考えた。

例えば、ロシアの労働プロパガンダ絵画は構成や構図として面白いなーと見るのだけど、いまいち気分がのらない。アガらない。

アメリカの西部開拓時代の絵、荒野やカウボーイの絵も似たような感じで、残らない。

両方とも、あんまりよく知らず、その時代の歴史背景の知識が乏しいからイメージできず、感覚に引っかからない。

ムガール時代もそんなでもないのに、豪奢な宝石があしらわれた装身具を持つ人物の身のこなし、建物のあしらいと石の冷たさや光と影や衣類や敷物の模様や質感を想像しやすいのはなぜか?と脳内DBをひっくり返してたら、昔どハマりしたインド映画を思い出した。


ジョダー アクバル 2008年

👇ジョダーとアクバルが心と身体の距離を縮めていく、日常のシーン抜粋版。インド細密画で描かれる男女が愛を語らう風景のリアルはこんな感じか…。

アクバル大帝(ムガール帝国3代目・イスラム教)に、ジョダー(ビンドゥ王朝の姫・ヒンドゥ教)が政略結婚させられる話。

名作「ボンベイ」にも見える、インド恋愛映画のお作法を踏襲して、踊りと歌とドラマで、イスラムとヒンドゥの男女の恋愛模様を描きながらも、ハッピーエンドな豪華絢爛時代劇。


バジラオ マスタニ 2015年

👇戦争に出る前にバジラオが兵士を鼓舞してるシーン。一番カッコよくて好きなシーンなのでピックアップ。インド細密画の狩りや戦闘の絵はこんな感じ?

女だてらに戦争で兵を率いちゃうマスタニ(ブンデールカント・イスラム教)が、戦闘で援軍を頼んだマラーター王国の宰相バジラオ(既婚・ヒンドゥ教)の第二夫人になる話。

宗教の違いからの小競り合い、第一夫人、第二夫人の女の闘い、夫と共に戦闘に向かったり、と、やたら闘う。


美しい建物や屋内のしつらえ、衣類や装身具と美男美女が作る画面、すべてのシーンが絵になる、「インド細密画」になる映画が、ジョダー アクバルとバジラオ マスタニ。

ラージプト。ラージプート。ラジャスタン地方の細密画。

イケメン度がムガールより下降気味に感じるが、
踊るマハラジャのムトゥがインドのイケメンだったはずなので、
このおじさんは正統派イケメンかもしれない。
おじさん、っていうか、王。

このふたつの映画、特にアクバルの方はどハマりして日本語字幕ないのにDVDまで買って何回も見た。会社の人に貸して返って来ないまま会社を辞めたから、今手元にないのだけど、「どこを切り取って絵にしようか」と考えながらもう一度見たい。

見たい。

ミタイ。

ミタイー…ってのが、ヒンディー語で「お菓子」だったはずなので、インド食材店でミタイーを買って、アッサムティーを入れて、もう一度DVDを大画面で見たいかも。

美術館の帰りはインドのお菓子ではなく、
府中駅近くの倉敷珈琲店でコーヒーゼリー。

駅から美術館までは
平坦な道をゆっくり歩いて20分弱。
散歩にぴったり。

こういうどハマり映画や漫画、小説でも、自分の中に「イメージの下地」を作っておくと、新しい情報や違うタイプのものに触れても、自分の経験に引っかかるからより面白く手繰り寄せる事ができるみたい。

インド細密画の展示に行く前でも後でも、ムガール時代イメージがつくとグッと解像度があがるし、豪華絢爛で見るだけで美女が伝染してきそうな、テンションが上がるこのふたつの映画を記しておきたい。

この記事が参加している募集

#オンライン展覧会

17,307件

#映画感想文

67,494件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?