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制度でケアできない若者たち

フリーのソーシャルワーカーとして、サバイバーとして、いろいろな場所で若者支援に関わらせてもらっていると、いろいろな若者に出会う。それこそ、リアル天気の子を地でいく若者であったり、児童養護施設出身の若者であったり、児童養護の制度には引っかからないものの、今までよく生きていてくれたと思う若者。

児童福祉関係でみると、1997年に自立援助ホームの制度化、2004年には社会的養護施設における退所児童への支援が明文化され、いわゆるアフターケアが義務化されました。もちろん、それ以前でも社会的擁護の各施設では退所後の相談援助が展開されていました。

そして、児童虐待・DV対策等総合支援事業として国庫1/2、自治体1/2で「退所児童等アフターケア事業」もスタートしています。ゆずりはさんや、あすなろサポートステーション、Lalaの家などがこれにあたります。

このアフターケア事業は、児童福祉や就業支援に精通したスタッフを配置し、SST、相談支援、生活支援、就業支援等を行うことにより、地域生活及び自立を支援するとともに、退所した者同士が集まりる場作りをしています。2014年の厚労省家庭福祉課の資料では、全国に20ヶ所あるようですが、私の仲間からの話によると、現在は倍以上に増えているそうです。それでも、事業規模感がバラバラであったり、内容の標準化はされていないそうです。

そして、社会的擁護の退所児童に対してはインケアといって、入所時から退所後を見越した支援がおこなれ、それは「いつまでも」続く支援であるとも言われています。子どもにとっては、退所後も入所していた施設とはそうしたことで関わりがあるかもしれません。

ただ、児童相談所は現実的に18歳を超えた時点で関わりが薄るなる傾向がありますし、私たちが出会う若者は必ずしも入所していた児童養護施設や自立援助ホームとの関係性がよくなく「2度と関わりたくない」と話す若者も少なからずいます。

では、そうした社会的擁護の枠組みに入っていない若者はどうなるのでしょうか。たとえば、18歳を超えてから家族を全てなくした。たとえば、親族はいるものの関係性が悪く独居している。たとえば、社会的擁護にケアされず生きてきたけれど、現にいま苦しい若者などは、現行の制度下では、そうした公的・準公的福祉サービスを受けるに至りません。

公的な福祉サービスではなく、民間団体に目を移した時はどうでしょうか。たとえば、東京都では都からの委託で10代の女子限定のラッピングバスがあったり、全国各地ではシェルターハウスという形で各団体が実践をおこなっていたりします。そして、後者は私が関わるNPO法人わっかをはじめ、公的支援がないことも多くあります。

こうして、制度から抜け落ちる若者たちへの支援は、民間団体の支援に委ねられています。団体によっては市民協働の採択事業として行なっている例にも出くわしますが、その多くは手弁当です。まさに私が理事として関わる法人ですが、クラファンでまかなっているという団体もあります。

こうした民間団体の支援も全国津々浦々にあるわけではありません。つまり、その団体と関係性が悪くなったら、後はないという若者にとっても苦しい状況です。社会的養護にかかっていなかった若者へのサポートや、アフターケア事業は充実させることが国としての責任のひとつでしょう。

そして、相談するハードル、つまり障壁にも目を向けなくてはなりません。相談には「そこに行かなければならない」というお金や時間の切出し、租税公課や年金の手続きなどで困っていても、そもそもどんな場所で、どんな相談ができるのか知らないという認知や知識の障壁。そして、誰しもがある自分の苦しさを他者に開示しなければならないという心理的障壁。

相談へと辿り着いたとしても、そこには言語化という課題がつきまといます。自分のことを「相談員が理解できるように」話すスキルや、どんな対応を求めているのか伝えるスキルなど。そうした言葉にできないことを引き出したり、汲み取ったり、アセスメントするのが相談員のひとつのスキルですが、残念ながら必ずしもそうした相談員ばかりではありません。

相談へとつながる回路を充実させることと同時に、相談へとつながった際には、相談に来た若者のこと全てを受け止める支援者の養成も求めていきたい部分です。そして、時には相談から入らない相談も必要かもしれませんね。

もやもやと書き連ねましたが、この2点は行政へと求めていきたいことです。もちろん、目の前の若者とは違いますが、今は社会福祉士だ、精神保健福祉士だと生活をしていますが、こうした社会的養護に引っかからない苦境に立たされた若者は、私の過去でもあります。

私の知識不足や至らない点も多いと思いますので、こうした支援が公的にあるなどの情報があればください。活かしたいです。

【補足】こうした思いがつのり、仲間とともに声を届けるキャンペーンを始めました。

「すべての若者があたりまえに社会の中で生活できる政策制度の拡充をお願いします!」

仲間とともに作った思いの全文。


現場から現代社会を思考する/コミュニティソーシャルワーカー(社会福祉士|精神保健福祉士)/地域の組織づくりや再生が生業/実践地域:東京-岐阜/領域:地方自治|政治|若者|子ども|虐待|地域福祉|生活困窮|学校|LGBTQ