【ネタバレあり】映画『ファースト・マン』感想【未来にお金を使おうぜ】
こんにちは。これです。
今回のnoteも恒例の映画感想です。今回観た映画は『ファースト・マン』。『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再タッグを組んで、アポロ11号の人類初の月面着陸までの道のりを描いた映画です。
実際観てみて、まずはとても静かな映画だなと感じました。それこそ『ラ・ラ・ランド』とは真逆ぐらいの。緊張感に包まれていてヒリヒリする映画でした。
では、詳しい感想を始めたいと思います。今回も拙い文章ですが何卒よろしくお願い致します。
―目次― ・1969年にタイムスリップ ・アポロ計画の光と影~偉業と犠牲~ ・未来にお金を使おうぜ
―あらすじ― 21世紀の現在でも困難な宇宙への旅。携帯電話もなかった時代に、月を目指した者たちがいた。 前人未到の月面着陸というとてつもないミッションの始まりから、志半ばで散った仲間の命、愛する家族の切なる祈りと希望、さらに偉業達成の陰にあった秘話まで、そのすべてが明かされる! (映画『ファースト・マン』公式サイトより引用)
※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。
・1969年にタイムスリップ
この映画最大の長所は紆余曲折を経て辿り着いた月の美しさにあります。38万㎞離れた月に初めて辿り着いたアポロ11号。ハッチを開けて望んだ月の風景は宇宙という黒い闇の中に灰色の流砂が浮かび上がっており、静かで厳しくて、でも息を呑むほど美しい。人類が未体験の世界が広がっており、それはまるで異世界のよう。でも、眼前に浮かぶビー玉ほどの小さな地球が現実であると教えてくれます。
そして、月面に降り立つアームストロング船長。ラダーが足りず飛び降りることになります。人類史上でもあまりに有名なあの足跡。「この一歩は、一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」という誰もが知る名言。旗を立てているシーンがカットされていて、いつの間にか船の横に旗が経っていたのにはちょっと驚きましたが、実際に白黒テレビで当時の様子を見ているようで、映画館というタイムマシンで1969年に連れていかれたような感覚を覚えました。
私が観た回はおじさんおばさんが多く年齢層はかなり高めだったんですけど、当時アポロ11号の偉業をリアルタイムで見ていた世代で、それをもう一度、今度はカラーでしかも高画質で見たいと思ってきたのかな。シニア層を狙い撃ちしてきていますね。
こうして人類史上の月面着陸を成し遂げたアポロ11号。ただ、その道のりは平坦なものではありませんでした。
・アポロ計画の光と影~偉業と犠牲~
この映画はニール・アームストロングがジェット機に乗って成層圏を目指すシーンから始まります。高度を上げていくにあたって激しく揺れる機体と画面。高度が上がり続けてしまうといういきなりのピンチを迎えますが、必死の操縦で何とか地表に帰還。成層圏に行くだけでこれなのだから、月に行くのはどれだけ大変なことかということを観客に見せつけてきます。
ここから本編が始まるわけですが、そうすんなりとアポロ計画には入りません。その前段階、宇宙で機体をドッキングするジェミニ計画というアポロ計画の前段階をクリアする必要があります。タイムショックのトルネードスピンのような訓練で吐き、眠くなるような座学を受ける宇宙飛行士たち。なお、このジェミニ計画の段階ですでに死者が出ています。
ジェミニ計画のために宇宙船に乗り込むアームストロングたち。ドッキング自体は成功するものの、その後のトラブルで再び離れてしまいます。それでも成功と言い張るアメリカ。このモチベーションはどこから出て来るのかっていうと、宇宙開発でソ連に先を越された悔しさからなんですよね。二度の戦争が技術のレベルを大きく引き上げたのと同様に、ソ連という競合がいるから負けじとヒートアップする。技術の進歩に対抗心は欠かせないということが示されています。ただ、対抗心剥き出しのあまりブレーキが利かないという悪い側面も同じように描かれていましたね。
ソ連に先を越された悔しさから宇宙開発を推し進めるアメリカ。ジェミニ計画をクリアしたことにし、アポロ計画へと移りますが、ここで試作機のアポロ1号に乗っていた3人の宇宙飛行士が火災によって命を落としています。さらに、アームストロング自身も着陸機のテストで死にかけるなど危ない目にあっていて、彼の妻ジャネットがNASAを詰るシーンもありました。
そして、とうとう本番。月へ飛び立つわけですが、その宇宙船はアポロ11号。ということはそれまでに10機の試作機が試されて、おしゃかになっているわけですよ。物的にも人的にも大きな犠牲が出ており、「偉業には犠牲が伴う」という事実が如実に表れていました。大きな偉業であるほど犠牲もより大きい。『ファースト・マン』はアポロ計画の光と影を描いた映画でしたね。「医学ノ発展・進歩ノタメニハ、犠牲ハツキモノデース」としたダイジョーブ博士は正しかった。
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また、その犠牲はニール・アームストロング本人にも重くのしかかります。ニールは2歳の娘を脳腫瘍で亡くしているという悲劇のキャラクター。そのぶん残った二人の子供には優しくしたいところですが、いかんせん仕事が忙しくて、構ってやることもなかなかできません。
このニール・アームストロングを演じたのが『ラ・ラ・ランド』『きみに読む物語』など多くの出演作を持つライアン・ゴズリング。『ファースト・マン』では寡黙で落ち着いた演技をしていて、それがこの映画の持つ静かなムードを決定づけていましたね。顔も今までよりはちょっと若くに見えたのは私の気のせいかな。かっこよかったです。
一方、ジャネットは同じ宇宙飛行士を夫に持つご近所さんと仲良くなりますが、そのご近所さんは先の火災で夫を亡くしています。そして、出発の前日。ニールは黙って出て行こうとしますが、ジャネットに止められます。ジャネットに言われてようやく子供と向き合いますが、ニールは父親としては間違いなくクソです。でも、家庭を犠牲にしなければ月面に辿り着けなかったと考えると同情の余地はありますね。本人もそれを悔いていて月に娘の形見を置いてきたのも懺悔の表れじゃないかって思いますね。唐突感はあったけど。
ただ、ここで文句を言わせてもらうと月に行くまでが長い!ゴールを知らないフィクションならともかく、この映画はゴールが分かっているノンフィクションなんですよね。アポロ11号というゴールがなかなか提示されないので、結構焦れてしまったんですよ個人的に。
それに宇宙船内はもちろん夜のシーンが多く、画面は暗くて目を凝らさなきゃならない。宇宙船の中のシーンはガンガン揺れて追いつくだけで目が疲れる。そこに静かな演出が合わさって、まるで私を眠りに誘うかのよう。序盤から中盤は睡魔と必死に戦っていたので、正直内容あまり覚えてません。『ラ・ラ・ランド』のようなミュージカルがあるわけでもないので、ぶっちゃけ退屈でした。
確かに『ファースト・マン』では映画終盤には大きな感動が待ち受けていたんですけど、前半がその犠牲になってしまっていたかなという印象です。「偉業には犠牲が伴う」というテーマそのものみたいな映画でした。
・未来にお金を使おうぜ
私は当時を知らないので、単純に面白いなーと思ったのがアポロ計画が結構反対されていたことなんですよね。「生活に直結しないアポロ計画に税金を使わないでほしい」っていう声が多くあって。黒人が「家賃は上がる。白人は月に行く」と歌っていたのが印象的でした。成功した後の手のひら返しには笑ってしまいましたけど。
まぁそりゃ私も思いますよ。生活に直結する福祉やインフラに税金を使ってほしいって。でもこういう声が以前よりも増えてきて、科学とか技術の分野に回される補助金ってどんどん少なくなってきているじゃないですか。ノーベル賞受賞者がお金がなくてクラウドファンディングする時代ですよ。世知辛いですよね。
なんで科学や技術への投資が先細っているかっていうとそれが「未来への投資」だからなんです。誰もイメージできない未来に向けてお金を使う。それは実現されないかもしれないという意味でとても勇気が要ることです。不明瞭な未来に向けてお金を使うぐらいなら、明瞭な今にお金を使った方がいいですよね。
でも、新たに発見された科学技術が生活に役立つということだってあると思うんです。というか現在の生活がこれだけ便利になったのも科学技術が道を切り開いて来てくれたおかげです。そこへの投資をしないということは未来の自分たちの首を絞めている。だからもっと科学技術へお金を使おうみたいなメッセージもこの映画は持っていたと個人的には考えてます。
さらに、同じことは映画やスポーツなどの娯楽にも言えると思います。正直娯楽なんてなくても生きていくことは出来ますし、本来生活には必要ないものです。
けれどもそこには「夢」があります。そしてアポロ11号が月面着陸をした瞬間に世界中の人々が一つになって喜んだように「夢」の達成には人々を一つにする力があります。その「夢」の達成へのモチベーションが生きるエネルギーとなって、生活を潤す。いわば「夢」への投資は未来へ生きていくための投資で、そのためにもっとお金を使おうぜみたいなこともこの映画は言いたかったんじゃないかなーって。まぁ生活もあるのでそこはそこそこに、ですね。
以上で感想は終了になります。最後よく分からない話になってしまってすみません。映画『ファースト・マン』、月のシーンはよかったもののそこに至るまでが退屈だったので、私個人の評価としては良くも悪くもないというのが正直なところ。でも、人類初の月面着陸を1969年に戻ったかのように楽しめるので、気になる方は観てみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。
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