「財務会計の概念フレームワーク」ざっくり解説①~財務報告の目的~

概念フレームワークとは、企業会計の基礎となる考え方の前提や概念を体系化したもので、これには会計基準を深く理解し、解釈の仕方に対する考えを高める狙いがあります。また、概念フレームワークはIFRS(国際会計基準)の基礎ともいわれます。

よく分かりませんね、難しい。そもそも、「概念」とか「フレームワーク」とか聞きなれないし、会計基準とどう違うのかも分かりにくいところです。しかし、この概念フレームワーク、簿記や会計を勉強し理解する上で非常に重要な考え方であり、また我が国だけではなく国際的な考え方を理解する上でも大切です。とはいえ、原文をそのまま読んでも難解なので、まずは全体像を掴み、一つずつざっくりと理解していきましょう!

まずは、前提として企業会計原則と概念フレームワークの簡単な違いを押さえましょう。

厳密に捉えようとすれば、企業会計原則は一般に行われている実務の中からより一般的なものを帰納・要約したもの、概念フレームワークは企業会計の基礎となる考え方の前提や概念を体系化(演繹・要約)したもの等、やや難解です。

そこで、まずはざっくりと、企業会計原則は実務(現実に行われている会計処理)をルールとしてまとめたもの、概念フレームワークは、多種多様なルールを一本化してまとめたもの、というイメージを持ってください。

企業会計原則:実務→ルール

概念フレームワーク:ルール→超ルール


概念フレームワークは以下から構成されます(2018年時点)。

第1章 財務報告の目的
第2章 有用な財務情報の質的特性
第3章 財務諸表及び報告企業
第4章 財務諸表の構成要素
第5章 認識及び認識の中止
第6章 測定
第7章 表示および開示
第8章 資本及び資本維持の概念

このうち、まずは「(一般目的)財務報告の目的」と「有用な財務情報の質的特性」を押さえる必要があります。今回は前半の、財務報告の目的を押さえていきましょう。

まずは「財務報告の目的」です。なぜ財務報告が必要なのかということは以下の記事にまとめていますが、簡単に説明すると、会社には投資家や銀行など資金を出資してくれる人々(ステークホルダー)が存在し、その人々に会社の経営成績や財政状態を公表するためです。

概念フレームワークでは、その財務報告の目的をもう少し深く掘り下げています。概念フレームワークでは、「財務報告の目的は、投資家による企業成果の予想と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況の開示にある」としています。より具体的には「自己の責任で将来を予測し投資の判断をする人々のために、企業の投資のポジションとその成果を測定して開示することにある」としています。

丸暗記するのは難しいし、すぐ忘れてしまうので、まずは一つずつゆっくりと理解していきましょう。

まずは、「投資家による企業成果の予想と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況の開示」は、ぶっちゃけそのままです。つまり、投資家等は会社の成績を見て投資するか否かを判断するので、会社はその判断材料を提供しなさいね、ということです。

次に後半の「自己の責任で将来を予測し投資の判断をする人々のために、企業の投資のポジションとその成果を測定して開示することにある」の部分です。ここでまず注目すべき点は、企業成果の予想と企業価値の評価を行うのは「投資家」であり、会社が行うのはあくまで「財務状況を開示すること」であるということです。言い換えれば、会社は財務状況は開示するが、自ら将来を予測しそれを公表することはないということ、つまり将来を予測・予想し投資を判断する責任は投資家にあるということです。

また、会社が測定して開示する投資のポジションとその成果のうち、「投資のポジション」は貸借対照表の情報を、「その成果」は損益計算書の情報をそれぞれ表しているとイメージしてください。

ここで、まずは覚えるべきキーワード(キーセンテンス)をまとめておきます。特に簿記1級の会計学の穴埋め問題、会計士試験の正誤判定問題や論述の基礎となりますので、まずはキーワードをしっかりと覚えましょう。

・企業会計原則(実務を帰納・要約)、・概念フレームワーク(多種多様なルールを体系化、一本化(概念化))、・財務報告の目的(「投資家」による評価のための、「会社」による財務状況の測定・開示)、・投資のポジション→貸借対照表、その成果→損益計算書

ここからは、少し応用的な内容に触れていきます。特に会計士試験では重要ですので、余裕があれば是非ご一読ください。

まず、財務報告の目的は、このような表現もあります。「財務報告の目的は、企業価値評価の基礎となる情報、つまり将来キャッシュフローの予測に役立つ企業成果等を開示することである」。

この表現からは、以下に述べる非常に重要な内容を読み取ることができます。

それは、「財務報告において提供される情報の中でも特に重要なのは「利益情報」といえる」ということです。

非常に重要な内容ですが、やや複雑で難解なので、少しずつ見ていきましょう。

投資家は公表された情報から、企業の財務状況、とりわけ投資の判断となる「企業価値」の評価に興味関心を持ちます。この企業価値を評価する際には、企業が将来どれだけのキャッシュフロー(お金)を得られるかの予測が必要となります。将来キャッシュフローの予測は利益情報等を用いて行われるため、投資家は財務状況の中でも特に利益情報に注目します。したがって、財務報告において提供される情報の中で最も重要な情報は「利益情報」ということができます。

フローに表すと、

投資家は投資の判断のために企業価値の評価を行う→そのためには将来キャッシュフローの予測が必要→将来キャッシュフローの予測には利益の情報が有益→財務報告において提供される情報の中でも特に利益情報が重要視される

フローを中心に少しずつ理解するようにしましょう。

最後に、その他の論点に少し触れておきます。

企業が財務状況を報告すること、あるいはその制度を「ディスクロージャー制度」といいます。このディスクロージャー制度における登場人物には、投資家と経営者(企業)の他に、監査人(主に公認会計士)の三者が挙げられます。このうち、投資家と経営者の役割(責任)は前述した通りです。重要な点は、企業価値の評価や予測の責任は投資家にあり、経営者(企業)はあくまで、財務状況を測定し報告する(「事実」の開示であり、「予測」の開示ではない)ということでしたよね。なお、監査人は、企業が開示した財務状況(財務諸表等)が正しいか否かを判断し公表することとなります。

以上が、財務報告の目的とその周辺論点のざっくりとした解説となります。やや難解ですが、簿記や会計を理解する核となる内容ですので、少しずつ覚えていくようにしましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?