いまハロプロが面白いという話

アイドルといえど、一旦タレントとして売れるとどんなに歌がうまくても「歌がうまいタレント」として認識され、「歌がうまい歌手」とは受け取ってもらえない。歌がうまいことは加点ではあるけど、すでにタレントとして成立している場合では「歌がうまいこと」が必要な条件ではないことの方が多い。

これはまさに孫状態。「孫が可愛い」を前提としている場合、孫が歌おうが踊ろうがその「可愛さ」に違いはない。つまり既に「可愛い」のでほかのことは正直どうだって良いしなんだって良いのだ。なんだって「可愛い」から。孫にとっては悲しい事実である。

このようにタレントとして売れるということ、広く受け入れられるということは国民の孫になるということとも言えそう。なにをしても「偉いねえ」と言ってもらう立場になることだが、やっぱり孫にとっては悲しいし手応えもないだろう。やっぱり悲しい事実。

売れてるアイドルのほとんどが"タレントとして"を経由しているが、これはSMAPの頃からあったように思う。メンバー各々に人物として感情移入している。その上で歌というパフォーマンスがおまけ(ご褒美)のようについてくる。中居正広の"歌ヘタキャラ"というのもそうしたプラスアルファの要素として音楽があったからこそ成立していたような気もしてきた。

こんな感じで「可愛い孫が最高の音楽をやっている」この状態こそがアイドルとしてのゴールなのかもしれない。SMAPは音楽もいつも最高だった。

ただこれだと「タレント的に売れること」と「歌とダンスを極めること」は別になっている。後者になりたい孫も正直いるだろうけど、しっかり売るためにはタレント的なことをカバーするのが当たり前の売り方である。マーケティングの悲しい事実である。

そんな中、ハロプロはファンにとっても「歌とダンスがすごい」ことをメインに評価することができるアイドルのように思える。

もちろんSMAPをはじめ全ての売れているアイドルはスキルも魅力も十分だが、売れることに関して"何を頑張るか"がある意味分かりづらいものになっている場合が多い。歌とダンス以外で何かスキルを身につけて目立っていく、というのが現代的なやり方となっているし、実際に目に触れるのは歌番組より平場のバラエティの方が多く後者の方が感情移入(共感)を誘う場面は多くなっている。

ハロプロの場合はシンプルに「歌とダンス」がすごければすごいほど評価につながるし、そこを軸にファンも見ることができる環境が整っている。楽曲にもソロパートが多く、「誰がどこを歌っているか」などたとえ映像が無くても楽曲自体に味わう要素が多く含まれている。そのうちに楽曲制作陣にも興味が湧いてくるという算段でもあり、このような「音楽至上主義」が保たれている唯一の世界でもある。それゆえにある程度閉ざされている世界に感じるのかもしれない。(実際近年までどうなっているかはほとんど知らなかったのである)

もちろん楽曲至上主義なアイドルは他にもたくさんいるだろうけど、頑なにJ-POPを正面からやるという姿勢はありそうでないように思う。もちろんその時流行りの〜という意味ではなく、少し先の日本の音楽を、という意味のJ-POP。それを確かな技術で歌唱されてる、スキルが求められるように作られている事実もまた面白いしそのぶつかり合いがファンにとっても楽しいのかもしれない。(曲と歌の頂上決戦的な意味で)

こうして歌中心に入り込むことでタレント的な場面に出くわしたとしても、順序が逆転し「歌のすごいあの子、実はあんなに面白い」という認識になる。一度こうなればイメージは歌手のままのため、その人に一番に期待することが歌とダンス、つまりライブでのパフォーマンスになる上、このイメージは一生変わらない。やっぱり第一印象は大事である。

こうした「歌とダンスを頑張ればのしあがれる世界」といういわば当たり前のようで今では全く見なくなった世界を保ち続けているハロプロが今一番面白いのでは?と思う。個人的には(プロの)音楽の楽しみ方ってこうだったよな、と思い出す作業でもあり、音楽の凄さを改めて実感させられているように思う。

アッコさんの言う「何をされてる方なの?」にハロメンたちは自身を持って「歌手です」と答えられそうなのもまた気持ちがいいなと思う今日この頃。つばきファクトリー武道館とっても素晴らしかったですね

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