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9/3 ラクスルは創造者か破壊者か?

インターネットが出てきてテレビは終わったと言われた。けれど終わらなかった。

AmazonPrimeやNetflixが出てきてテレビは終わったと言われた。それでも終わらなかった。

テレビが終わると言われる度に放送局や広告代理店は危機に晒される。インターネットもサブスク企業もいずれも外圧的な出来事だが、今回紹介するのはどちらかというと内部から壊れる印象を受ける。今度こそテレビは終わってしまうのだろうか?

こんな事を考え始めたきっかけはこのツイートを拝見したことが始まりだ。

で、どんなリリースが出たかというとこれだ。

私の感想と共にで恐縮ですが、これは結構な大ニュースです。

ラクスルは既に日テレと組んでTVCM枠を販売するサービスを展開しています。発表当時は話題になりましたが、そこまで大きなインパクトはもたらしませんでした。それは何故か?

話題にならなかったのは何故か?

それはクリエイティブが弱いからです。事例で紹介されているCMを観て頂ければ少し感じて頂けるでしょうか。

普段皆さんが普段テレビで目にするようなクリエイティブ(CM)ではないのではないでしょうか?シンプルというか、ちゃっちいというか・・・(失礼)大手代理店はその点を甘く見ていたと思います。我々レベルのクオリティで出来ないだろうし相手にする必要ない、影響は少ないと。

しかし、ここで疑問が生じます

「ちゃっちい」と評価しているのは我々業界の中の人だけでは?視聴者はCMのクオリティで購買を決定していないのでは?寧ろ分かりやすいのはそちらでは?予算の少ないクライアントにとってはクオリティに拘る代理店はウザいのでは?

大手代理店が抱いていた懸念(クオリティの低さ)をラクスルは自ら解決しました。しかもGOという勢いのあるクリエイティブ会社と組むことによって。これでCMのクオリティで何やかんや言われることは無くなると思われます。クリエイティブパートナーを得て、次はどうするのか?

TVCMの買い方を変えるか?

基本的にTVCMは広告代理店経由でしか購入できません。クライアントが直接放送局に対して買い付けるということは出来ないのです。

ラクスルは広告代理店ではありませんがCM枠を販売しています。おそらくはラクスルと日テレの間にどこか代理店を挟んでいると思いますが、既に強固なテレビ業界の構造にヒビが入ったとも言えます。

しかもラクスルのサイトを見て頂くと分かるのですが、ユーザー自身が「この番組枠を買おう」と選んでいる様子を見ることができます。

TVスポットに限っていえば、基本的にどの番組枠に広告を出したいというのはタイム広告(いわゆる提供番組枠)を買わない限りクライアント側は選ぶことができません。(希望を伝えることは出来ますが、、あとは裏ワザとか、、)

細かい話をいえば、広告枠は総量が限られているため誰もが好きな枠を好きなだけ買うということはたとえラクスルであっても出来ません。それでも、こういう買い方(クライアント側が自由に選ぶ買い方)が一部実現できるということをラクスルは証明したと言えます。

インターネット業界では「クライアントが買いたい量を買いたいだけ買う」というのが比較的可能ですが、テレビは視聴率がベースなので出来ない訳です。しかし、クライアントの使い勝手が良いインターネット広告であっても、Googleはオークション形式でユーザー側に裁量を渡したように思わせていますが、アルゴリズムの部分は公開していないため最も大事な部分は当然ながらユーザーに明け渡していません。

テレビ業界におけるアルゴリズムとは

テレビ業界は全くと言っていいほど自動化されていません。ですので、テレビ業界におけるアルゴリズムは人です。人がテレビの広告枠を管理しています。つまりは、人を動かしている会社のシステムが最も重要な部分(アルゴリズム)と言えるでしょう。

ラクスルが業界変革に対してどこまでコミットするかは分かりませんが、ラクスルが変革を推し進めたとして(インターネットのような買い方をテレビにも導入するとなったとして)放送局はその大事な部分を明け渡すでしょうか?そうはしないですよね。

では、何かが変わるでしょうか?

私の仮説としては産業構造は揺らぐが大きくは変わらない、というのが予想です。つまりは大手数社の寡占構造維持。しかし、TVスポットの買い方が変わるかもしれません。

なんで、ラクスルみたいに買わせてくれないの?

という問いをクライアントが放送局に投げかけたとして、誠実に答えようとすればするほど放送局側の立場は苦しくなります。そしてもっと苦しくなるのは広告代理店です。仮にインターネット広告のような買い方を導入されれば、広告代理店は必要なくなります。広告代理店も黙って見過ごすでしょうか。どう抵抗するのか。

ラクスルの取り組みが上手い点

この取り組みが上手いのはスタートアップ向けと銘打っている点です。それだけで広告代理店側もまた安心してしまうかもしれません(今度はそんなこと無いかな)

スタートアップの数が増えてきていると言いつつも、まだTVスポットを打てるだけの体力がある企業は数は多くないでしょう。そもそも業態としてTVスポットとの親和性もあるでしょうし。つまり、影響の少ないところから始めているという点が憎らしい。

ただ、段階を経てラクスルがTV業界を変えつつあるというのは事実です。

蟻の一穴という言葉がありますが、次に打つ手で1つ強固な構造を保っていた一部が崩れるかもしれない。あるいはもう崩れ始めているかも。正直ラクスルが何をしだすか恐ろしいですよ。



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