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第6章:チームビルディングとタックマンモデル - 効果的なチームを築き、組織目標を達成するための道標

6.1 組織、グループ、チーム:集団の形態と連携の深化

組織、グループ、チームは、それぞれ異なる特徴を持つ集団の形態であり、組織内における連携の深化を理解する上で重要な概念です。それぞれの定義と、特にグループとチームの主な違いを理解することで、組織内における効果的な集団形成と管理が可能になります。

  • 組織: 特定の目的を達成するために、意識的に形成された、より大規模で公式な集団です。組織は明確な構造、階層、役割、規則を持ち、共通の目標に向かって活動します。

  • グループ: 共通の興味や関心を持つ個人の集まりです。グループは必ずしも共通の目標を持ち、組織的な構造を持つわけではなく、メンバー間の相互作用は限定的です。

  • チーム: 共通の目標達成のために協力する、高い相互依存性を持つ集団です。チームは明確な目標を持ち、メンバーはそれぞれの役割を理解し、互いに協力することで、個々の能力を組み合わせ、より大きな成果を生み出します。

グループとチームの主な違い:

特徴グループチーム目的の共有個々のメンバーが独自の目標を持つ場合が多いメンバー全員が共有する明確な目標がある相互依存性比較的独立している互いに依存し合う責任の所在主に個人に責任がある個人とチーム全体に責任がある成果の性質個々の成果の総和協力による相乗効果で個人の総和以上の成果を生むリーダーシップ明確なリーダーが不在の場合も多い明確なリーダーシップ構造がある

組織内における集団形成においては、状況や目的に応じて、グループ形態とチーム形態を適切に選択し、活用することが重要です。

6.2 タックマンモデル:チームの成長と発展の段階を理解する羅針盤

タックマンモデルは、グループが効果的なチームへと成長する過程を5つの段階で説明するモデルであり、チームビルディングの重要なフレームワークとして広く活用されています。このモデルは、チームの成長過程を理解し、各段階に応じた適切なマネジメントやサポートを提供することで、チームの成熟とパフォーマンス向上を促進します。

6.2.1 形成期(Forming):出会いと期待

  • 特徴: チームが結成されたばかりの段階で、メンバーはお互いをよく知らず、緊張感や不確実性を感じています。メンバーはそれぞれの役割や期待を明確に理解しておらず、チームとしてのまとまりはまだありません。

  • 活動: メンバー間の相互理解を深めるためのコミュニケーションを促進することが重要です。リーダーはチームの目標を明確に提示し、チームのビジョンや方向性を共有することで、メンバーの期待を統一し、チームとしての基盤を築きます。

6.2.2 混乱期(Storming):衝突と葛藤

  • 特徴: メンバー間で意見や主張がぶつかり合い、コンフリクトが発生する時期です。個々のメンバーは自分の立場や意見を主張し、チームとしての共通認識や協力体制が確立されていないため、衝突や摩擦が生じることがあります。

  • 活動: この段階では、コンフリクトを建設的に解決するためのコミュニケーションと調整が不可欠です。リーダーはメンバー間の対話を促し、意見の衝突を建設的な議論へと導き、チームの目標達成に焦点を当てて、共通の認識を形成するようサポートする必要があります。

6.2.3 統一期(Norming):協力と規範

  • 特徴: メンバーが共通のルールや価値観を共有し始め、チームとしての一体感が生まれます。メンバーは互いの強みと弱みを理解し、協力し始めることで、チームとして機能し始めます。

  • 活動: チームの一体感を高め、役割分担を明確にすることで、効率的に機能し、成果を上げることができるようになります。リーダーは、メンバー間の協力体制を構築し、チームの規範や行動指針を確立することで、チームの安定と成長を促進します。

6.2.4 機能期(Performing):成果と成長

  • 特徴: チームが最も効果的に機能する段階で、メンバーは自律的に働き、共通の目標に向かって協力します。チームは高い生産性と創造性を発揮し、目標達成に向けた具体的な成果を出し始めます。

  • 活動: リーダーはメンバーの能力を最大限に引き出し、チームの目標達成を支援します。また、チームの継続的な成長を促進するために、新しい課題や目標に挑戦し、メンバーのスキル向上を支援します。

6.2.5 散会期(Adjourning):成果と学び

  • 特徴: チームの任務が完了し、解散する段階です。チームメンバーは、これまでの活動成果を振り返り、達成感や充実感を共有します。

  • 活動: チームの成果を振り返り、成功と失敗から学び、その経験を今後の活動に活かすことが重要です。リーダーは、チームメンバーの貢献を称え、チームとしての成長を共有することで、解散後のモチベーション維持と今後の発展につなげます。

タックマンモデルは、チームの成長過程を理解し、各段階に応じた適切なマネジメントやサポートを提供するための指針を提供します。これにより、グループが効果的なチームへと成長し、組織の目標達成に貢献することが可能になります[1, 2, 3, 4, 5]。

6.3 タックマンモデル導入の注意点:チームの特性と状況を考慮した柔軟な運用

タックマンモデルは一般的なチームの発展プロセスを示すものですが、個々のチームの特性や状況を考慮し、柔軟に対応することが重要です。

  • 個人差を考慮する: メンバーの性格、文化的背景、専門分野によって、各ステージで必要なスキルやアクションが異なる場合があります。

  • 柔軟性を持たせる: モデルはあくまで一般的な枠組みであり、現実のチームの発展プロセスは複雑です。メンバーの入れ替わりやプロジェクトのスコープ変更など、予期せぬ状況に対応するために、柔軟なアプローチが必要です。

  • 混乱期の重要性: 混乱期は避けるべきものではなく、乗り越えるべき重要なステージです。この時期に適切な対処を行うことで、チームは成長し、より強い結束力を得ることができます。

  • モデルの理解と共有: タックマンモデルを活用するためには、リーダーだけでなくチーム全体がモデルを理解し、各ステージで必要なスキルやアクションを把握することが重要です。

  • コミュニケーションの工夫: 各ステージに応じて適切なコミュニケーション方法を選ぶことが重要です。特にリモートワークの状況下では、オンラインツールを活用し、非言語コミュニケーションを意識することで、形成期における関係構築を促進することができます。

6.4 タックマンモデル導入の失敗事例:チームの成長を阻害する要因

タックマンモデルを導入する際に、以下のような失敗例に注意が必要です。

  • 混乱期の対処不足: 混乱期はチームが対立や意見の不一致に直面する時期であり、適切な対処が必要です。これを乗り越えるための対話や調整が不足すると、チームの成長が停滞する可能性があります。リーダーは、コンフリクトを恐れずに、建設的な議論の場を提供し、メンバー間の理解を深める必要があります。

  • モデルの理解不足: タックマンモデルをリーダーだけが理解している場合、チーム全体での実践が困難になります。全員がモデルを理解し、各ステージで必要な行動を取ることが重要です。リーダーは、チームメンバーにモデルを説明し、理解を深めるための時間を設ける必要があります。

  • 柔軟性の欠如: タックマンモデルは一般的な枠組みであり、現実のチームの発展プロセスは複雑です。予期せぬ状況に対応するために、柔軟なアプローチが必要ですが、これを怠ると失敗につながります。リーダーは、状況に合わせてモデルを調整し、チームの成長を柔軟にサポートする必要があります。

  • コミュニケーションの不足: 特にリモートワーク環境では、コミュニケーションが希薄になりがちです。タックマンモデルを導入する際には、オンラインツールを活用し、定期的なミーティングやコミュニケーションの機会を設けることで、チームメンバー間の連携を促進する必要があります。

  • 個人差の無視: チームメンバーの個人的な特性や背景を考慮しないと、各ステージで必要なスキルやアクションが適切に実行されない可能性があります。リーダーは、メンバーの個性を理解し、それぞれの強みを活かせるような役割分担や活動内容を検討する必要があります。

これらの失敗を避けるためには、モデルの理解を深め、柔軟な対応とコミュニケーションの強化を図ることが重要です。

6.5 リハビリテーション部門へのタックマンモデル適用:多職種連携を促進するチームビルディング

リハビリテーション部門では、多職種が連携して患者をケアするため、タックマンモデルを導入することで、チームの成長を促進し、患者中心の質の高いケアを提供することができます。

  • 形成期: 新しいチームメンバーの紹介と役割の明確化、リハビリテーションの目標と方針の共有、患者情報の共有システムの構築、チームとしての共通認識を形成

  • 混乱期: 多職種間での意見の相違や治療方針の調整、患者の進捗に関する評価基準の統一、コンフリクト解決のためのオープンな対話の促進、チームとしての共通理解を深める

  • 統一期: チーム内でのコミュニケーションプロトコルの確立、患者ケアの標準化プロセスの開発、定期的なケースカンファレンスの実施、チームとしての規範を確立

  • 機能期: 効率的な多職種連携によるリハビリテーションの実施、患者の目標達成に向けた協調的なアプローチ、継続的な品質改善活動の実施、チームとして成果を上げる

  • 散会期: 患者の退院や転院に向けた準備と情報共有、チームの成果の振り返りと学びの共有、次のケースに向けた改善点の特定、チームとしての経験を共有

6.6 タックマンモデルを活かしたチームビルディング:効果的なチーム作り

タックマンモデルを活用することで、チームの成長を効果的に支援し、組織の目標達成に貢献することができます。以下に、チームビルディングにおける具体的な例を示します。

  • 形成期: チームメンバーの紹介、チームの目標と役割の共有、アイスブレイク活動などを通じて、チームメンバー間の親睦を深めます。

  • 混乱期: 意見交換や議論を通じて、メンバー間の意見の相違を明らかにし、建設的な対話を通して解決策を探ります。リーダーは、コンフリクトを恐れずに、建設的な議論の場を提供し、メンバー間の理解を深める必要があります。

  • 統一期: チームルールや役割分担を明確にし、チームとしての一体感と信頼関係を築きます。リーダーは、メンバー間の協力体制を構築し、チームの規範や行動指針を確立することで、チームの安定と成長を促進します。

  • 機能期: チームメンバーがそれぞれの役割を理解し、協力して目標達成に取り組みます。リーダーは、メンバーの能力を最大限に引き出し、チームの目標達成を支援します。

  • 散会期: チームの成果を振り返り、学びを共有し、今後のチーム活動に活かします。リーダーは、チームメンバーの貢献を称え、チームとしての成長を共有することで、解散後のモチベーション維持と今後の発展につなげます。

参考文献

[1] https://www.dodadsj.com/content/20230531_tuctkman/

[2] https://www.kaonavi.jp/dictionary/team-building/

[3] https://www.kaonavi.jp/dictionary/tuckman-model/

[4] https://syujitsusya.co.jp/column/management/article-1723/

[5] https://thanks-gift.net/column/engagement/tuckman-model/

[6] https://www.businessballs.com/team-management/tuckman-forming-storming-norming-performing-model/

[7] https://ecampusontario.pressbooks.pub/hrstrategicprojectmanagementtheory/chapter/4-5-in-depth-look-tuckmans-model-five-stages-of-team-development/

[8] https://note.com/nicetaninaka/n/n16d05e95c2a1

[9] https://ourly.jp/tuckmanmodel/

[10] https://teamhackers.io/what-is-a-tuckman-model-how-to-overcome-the-turmoil/

[11] https://www.kaonavi.jp/dictionary/tuckman-model/

[12] https://souken.shikigaku.jp/98/

[13] https://workhappiness.co.jp/blog/trend/5_tuckmanmodel/

[14] https://www.kaonavi.jp/dictionary/team-building/

[15] https://tayori.com/blog/team-building/

[16] https://asana.com/ja/resources/group-vs-team

[17] https://rfc-partners.co.jp/column/group_team_-difference_team_building/

[18] https://ourly.jp/group_team/

[19] https://note.com/yama_touchan/n/nbcc0d40d51f1

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