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#川崎のぼる
巨人の星VS侍ジャイアンツ ~梶原一騎が描いた〝陰〟と〝陽〟の ど根性ストーリー~(「昭和40年男」2020年4月号・特集“俺たちど根性世代”より
俺たち昭和40年男は「巨人の星」に代表される〝スポ根マンガブーム〟をリアルタイムでは体験していない。しかし、ブーム以降もスポーツを通じて〝努力〟や〝根性〟の尊さを描く熱血ドラマは俺たちの少年期にも受け継がれていた。だから「巨人の星」も過去作品という意識はなく、テレビの再放送やコミックスを通じて十分に熱中できたのだ。
悲運という宿命に挑む ミスターど根性・星飛雄馬
♪思い込んだら試練の道を行
第二十回「新巨人の星」(その4)(2016年10月号より本文のみ再録)
『巨人の星』がそうであったように、『新巨人の星』もまた、読売巨人軍という実在の球団が背負う“常勝”という宿命に強く影響された作品であった。
前者は巨人V9のうちの6年という黄金期に連載(1966~71年)されたことが相乗効果となって一大ブームを巻き起こしたのは誰もが認めるところだろう。だが、『新巨人の星』では、そのことがネガティブな影響を及ぼす。
「青年、成人向けの豪華巨編劇画」、「人生一大
第十九回「新巨人の星」(その3)(2016年8月号より本文のみ再録)
長嶋監督就任3年目のシーズンとなる1977年のペナントレースは巨人の独走だった。開幕後の4月に首位に立つと、その座を一度もゆずることなく9月にはそのままリーグ2連覇を達成する。しかも対戦チームすべてに勝ち越しという完璧な優勝である。この結果に梶原は安堵で胸をなで下ろしたことだろう。これで1年分のストーリー展開が作りやすくなった...と。
『巨人の星』『侍ジャイアンツ』『おれとカネやん』(※)など
第十八回「新巨人の星」(その2)(2016年6月号より本文のみ再録)
前回『新巨人の星』をあえて「失敗作の烙印を押された作品」と書いた。だが、それは作り手の思惑や目論見について十分な成果をあげられなかったことに対しての評価であり、作品そのものが読むに値しない駄作という意味では決してない。特に序盤から中盤にかけての、飛雄馬の巨人復帰から右投手として再びマウンドに立つまでの流れは、さすが稀代のストーリーテラー・梶原一騎の面目躍如だと言えよう。
旧作の頃よりもさらに密
第十七回「新巨人の星」(その1)(2016年4月号より本文のみ再録)
あの『巨人の星』の続きが読める!星飛雄馬に再び会える!それは昭和40年男にとっても壮大な“祭り”になるはず、であった…。
今回から取り上げる『新巨人の星』が連載を始めたのは1976年のこと。奇しくも『巨人の星』が『週刊少年マガジン』で連載を開始してからちょうど10年の節目に当たる年であった(※)。本連載でも何度か触れているとおり、我々は前作に対してリアルタイムで触れた記憶は薄く、その連載終了か
第十回「巨人の星」(その4)(2015年2月号より本文のみ再録)
1970年暮れ、梶原一騎の名を一躍世に知らしめた大出世作『巨人の星』も、4年9ヶ月に及ぶ長期連載に幕を降ろす時が訪れた。そのクライマックスは、自らの投手生命をかけて挑んだ完全試合という偉業が成し遂げられるか否かという展開だった。最終打者として打席に立つのは、かつての親友・伴宙太。彼に魔球攻略の策を指示したのは父・一徹。カウント2‐3からの最後の1球で、飛雄馬の左腕が破滅の音を立てた。成るか⁉完全
もっとみる第九回「巨人の星」(その3)(2014年12月号より本文のみ再録)
悔しいことに、僕ら昭和40年男は『巨人の星』をリアルタイムで目の当たりにしてはいない。雑誌に連載していたのが1歳から5歳に当たる時期(※1)なので、『巨人の星』のマンガは単行本で、テレビアニメは再放送で初めて触れた世代である。
筆者の場合は、小学校高学年の頃、平日の夕方に再放送されていたアニメを観てすぐに夢中になったあげく、続きを早く知りたくなり翌週まで待ちきれずに単行本を買いそろえたクチであ
第八回「巨人の星」(その2)(2014年10月号より本文のみ再録)
『巨人の星』は正しく評価されているだろうか?
筆者が以前より抱えていた疑問に対する考察から前号は始めた。「いわゆるカッコよかないが、むしろカッコわるい試行錯誤のくり返しの中から磨かれて底光りする真のカッコよさ」「はためは滑稽だろうが、バカに見えようが、本人は一生懸命な男の美でありロマンである」(※1)
上記の言葉が示すように作者が『巨人の星』で描きたかったのは、当時あったオトナたちの結果万能
第七回「巨人の星」(その1)(2014年8月号より本文のみ再録)
今、『巨人の星』は正しく評価されているだろうか?
劇画原作者・梶原一騎の名を一躍世間に知らしめたといえる本作品を取り上げるにあたり、頭にまず浮かんだのがこの疑問だった。筆者が出した結論を先に言えば❝NO❞だ。
確かに知名度は高い。2014年の現在も原作マンガは書店に並んでいるし、テレビアニメも地上波や衛星放送で流れている。昨年はアニメ放送45周年を記念してブルーレイボックスが発売され、数年前に