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天使の住む処ー「アンダー・ザ・シルバーレイク」を観て思う

公開時に一部で話題になっていた「アンダー・ザ・シルバーレイク」
を観ました。デヴィッド・リンチ「ブルーベルベット」を思わせる
スローな移動から始まる本編は50年代のノワールフィルムを
現代に置き換えた風で。

で、鑑賞後の感想は。
スタイルの新しさとは裏腹に古典的なメッセージを抱えた映画でした。
社会を正しく生きる術は、人は社会とどう関わるべきか、或いは
現代社会は生きる価値があるかを問うてる。
そんな映画ではないでしょうか。

鍵はサムの母が大好きで劇中にも登場する「第七天国」。
私も大好きで総てのラブストーリーはここから始まったと言って良い
サイレント名作中の名作に何かが隠されているよう。
新興宗教の教祖のようなチャールズ・マンソン風な男がサムに
問いかける主張と「第七天国」という言葉が持つ宗教的意味
は重ならないでもありません。

物欲主義の現在で安らかな死を迎えられるのか?
その世界にまみれて生きる価値は有るのか?
サムに付いた匂いは何を象徴してるのか?
現代を代表する大手ファストフードチェーン店のキャラ
を模したポスターに張り替えられているのも一つの象徴
ではないでしょうか。
張り替えられる前のポスターのコピーが否定されていると
考えると腑に落ちます。

ついでに言えばハリウッドもその流れの一つの象徴として
否定的な捉え方もしているようでした。
50年代以前の映画が流れたりポスターが張られていたり。
善き社会の鏡として当時の映画を引き合いに出していたの
かもしれません。

ただ、犬を代表としてあまりにもメタファーが多いのは
確かでそれを一つ一つ考えると難解に堕ちるのも事実です。
自分の場合はそこは多少眼をつぶって表層的だけどこんな感じで
観てそれなりには納得し楽しめました。
良い意味で予想を裏切る作品ということで。

最後にもう一つ「第七天国」について。
エンドクレジットのタイトルの下部に小さくSince1928と記されて
います。因みに「第七天国」は1927年製作。
1年違うけれどこの古典フィルムとスタイリッシュな現代映画
にはやはり深い関わりが有るのでしょう。

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