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なぜ、人は本を求め、本を読むのか?

僕が代表のクエストリーでは「ミッションを掲げ、その実現を目指す」中小企業の経営者のネットワーク「ブランディングクラブ」を主催しています。業種、業態、規模、エリアが異なる独自性のある企業が加盟しています。

本稿はクラブ会員向けに毎週配信している「ブランディングレポート」の1043号(2022年9月12日配信)に加筆修正したものです。ミッション経営を目指す経営者のご参考になればと思い、公開いたします。

競合との差別化は、「立ち位置の明確化」の結果に過ぎません

不確実性の時代に求められる「ミッション経営」の5回目です。ミッションに含まれるのは「存在理由」「立ち位置」「社会貢献」「判断基準」です。それぞれ個別の意味を持ち、相互に連携し、ミッションを構成しています。

前回解説した「存在理由」は「市場や顧客が求めるものに対して、自社が提供する価値」のこと。存在理由は「社会が求めるもの」と「自社の持っているもの」との接点に眠っています。今回は「立ち位置」について述べます。

立ち位置を明確にする目的は何でしょうか。一般的には「競合と差別のため」といわれています。もう少し深く考えると、生活者から見たときに、自社の存在が「他に替えられない独自性を持ったものになる」ためです。

売っている商品を立ち位置にすると競争に巻き込まれます

初めての方と名刺交換したときなどに、「どんなお仕事ですか?、何屋さんですか?」と質問されることがあると思います。あなたならばどのように答えますか?多く方は自社が売っている商品を伝えるのではないでしょうか。

例えば、本を売っているのならば「本屋です」と答えます。この答えの立ち位置は「売っている商品」です。売っている商品を立ち位置にするとどうなるでしょうか。世の中にある数多くの本屋さんと競合することになります。

地元だけでなく、ネット上には世界中の競合がひしめいています。つまり、モノの販売に立ち位置を定めることは、大激戦地帯に立脚することになります。当然、大激戦地帯で小さな会社が生き残るのは簡単ではありません。

本を買う人は「本というモノ」が欲しいのでしょうか?

立ち位置は、「What」ではなく、「Why」の視点で考えよう

ちょっと視点を変えましょう。本を買う人は本というモノが欲しいのでしょうか。僕が本を買う理由は、「本を読むことで考え方を深めたい」「本で得た情報を仕事に活かしたい」「読書で気分転換をしたい」などです。

本屋さんは本を買う場所ではありません。そうならば、本を売るのをやめましょう。「それじゃあ売上がつくれない」、その通りなのですが、「何かの体験を得るために本を購入する」という立ち位置を見出せばいいのです。

「What」ではなく、「Why」の視点で考えてください。「誰に対して、どんな体験を提供するための、役割を担っているのか」・・・この問いに対する答えから、売っている商品とは異なる「新たな立ち位置」が見つかります。

人は本を通じて「どんな体験を得たい」と思っているのでしょうか?

独自性のある「自社ならではの立ち位置」を見つけ出そう

本屋ならば、「本とは何か?なぜ人は本を読むのか?どんな人がどんな目的で本を選ぶのか?・・・」、本の持っている意味を考え抜くことです。新しい立ち位置の本屋を紹介します(詳細はネットで検索してください)。

ライフスタイルを選ぶ場所「蔦屋書店」、本と出会うための本屋「文喫」、独自に編集された文脈棚の「往来堂書店」、泊まれる書店「BOOK AND BED」・・・いずれも他にない独自の立ち位置を持った書店です。

独自に編集された文脈棚で知られる「往来堂書店」(文京区千駄木)・・・仕事場の近くです

立ち位置が唯一無二であればあるほど、高い独自性を得ることができます。反対に、立ち位置を「モノを売る」にとどめていれば、厳しい同質化競争に晒されます。いうまでもありませんが、小さな会社の立ち位置は前者です。

こちらにも「ミッション経営」について書いています


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