中小企業は戦わないで生き残る
大きな影響を与える可能性が高い相手とは戦わない
多くの中小企業は他社と比較されることにそれほど抵抗を感じない。選ばれるためには仕方ないと受け入れるのだ。比較を受け入れるとは、戦いのなかに身を置くことだ。経営者の本音は「比較されずに選ばれたい」にある。
比較されずに選ばれるのは簡単ではない。複数のポジショニングマップを作っても、競争相手がいないところは見つからない。どのポジションも競争相手だらけだ。望む、望まないにかかわらず、戦いに巻き込まれていく。
でもこう考えたらどうだろうか。「戦わない経営」とは競争ゼロを目指すことではない。「自社に大きな影響を与えるかもしれない(=勝てる要素が少ない)相手との競争を回避する」、これが「戦わない経営」だと思う。
日本の企業の多くは競争によって成長してきた
誤解がないように述べておくが、「戦う=競争する」ことがすべて悪いわけではない。ライバルがいることで技術や能力は磨かれる。差別化によって新しい商品が生まれる。競争があることで市場は活性化する。
日本企業には競争を有利に活かしてきた歴史がある。戦う対象がはっきりしているので相手を研究できた。研究した結果を改善・改革に活かすのはお家芸だ。需要の旺盛な時代は、競争相手と学習し合うことも可能だった。
ところが 、いまは競争相手が見えにくい。競争相手は業界や地元だけでなく、業界外や地元外にも存在している。ネット上には世界中の競合がひしめいている。少しくらいの差別化ではすぐに模倣され、無効化されてしまう。
一番強い者は、自分の弱さを忘れない者だ
雑草生態学が専門の静岡大学の稲垣栄洋教授がとても興味深いことを述べている。「雑草魂」という言葉があるように、雑草にはしぶといイメージがある。しかし、稲垣教授は「雑草は弱い植物」だという。
稲垣教授の著書『弱者の戦略』にはこんな一文が書かれている。「弱者は実にさまざまに工夫し、戦略的に生きることを求められる。そして、他の生物がいやがるような変化にこそ、 弱者にチャンスが宿るのである」。
生存競争の激しい森林や深い藪のなかでも強い植物は生き残れる。しかし、弱者の雑草は生き残れない。光も水も得られないからだ。だから他の植物が入ってこない道路、道端、荒地、斜面、 畑などを生息域として選ぶのだ。
「戦わないための経営」の基本姿勢とは何か?
中小企業も同じだ。 他よりも高い価格でも熱烈な支持を得ている企業はたくさんある。共通しているのは、競争相手よりも顧客を見ていることだ。価格以外の顧客の要望や期待を満たすことに全力をあげている。
競争回避のために「戦いのないところを探しだす」ことにも貪欲だ。限られた市場の奪い合いでは勝てないことをよくわかっている。だから、自社の強みを活かせる市場を探し出している、見つからなければつくり出している。
戦わない経営を目指す経営者はタフだ。比較されてもネガティブな感情を抱かない。「ヨソはヨソ、ウチはウチ」に徹しているからだ。これが「戦わない経営の基本姿勢」だ。中小企業は「勝てない戦いを即刻回避せよ」!
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