「差別化の罠」とは顧客を忘れ、競合との違いだけにとらわれること
僕が代表を務めるクエストリーでは「ミッションを掲げ、その実現を目指す」中小企業のネットワーク「ブランディングクラブ」を主催しています。業種、業態、規模、エリアが異なる独自性の強い企業が加盟しています。
本稿はクラブ会員向けに毎週配信している「ブランディングレポート」の1033号(2022年6月27日配信)を一般向けにアレンジしたものです。ミッション経営に取り組む経営者のご参考になればと思い、公開します。
カテゴリーやエリアを超えた競合過多の時代
どの企業にも必ず競合が存在します。しかも、従来は同じ業界内の競合でしたが、いまは業界を超えた競合が登場してきます。さらに、インターネットには世界中の競合が集まっています。まさに競合過多の時代です。
自社の商品やサービスを選んでもらうには、競合との違いを訴求し、顧客に認めてもらわなければなりません。しかし、商品やサービスが標準化したいまは、機能や価格で大きな違いを出すのが難しくなってきています。
そこで、体験での差別化が問われるようになってきました。しかし、どの企業も考えることはほぼ同じです。練りに練ったプランもすぐに類似化します。つまり体験でも違いを出すのが難しくなってきているのです。
無理やりの「違い探し」が生み出す差別化の落とし穴
それでも多くの企業は「違い探し」に没頭します。目線は競合に向けられ「価格を下げねば、新商品を出さねば、陳列や提案を変えねば」・・・この「ねばねば現象」が続くと「差別化の罠」に陥る可能性があります。
差別化の目的は競合との間に競争上の優位性をつくることです。しかし、競合との差別化自体が目的になると、無理やり違いを作り出します。目指すべき顧客にとって意味も持たない「違い探し」が差別化の落とし穴なのです。
大事なのは、顧客が競合と比較検討したときに、自社を選ぶ理由になる違いです。これが差別化ポイントとして機能することで、競争上の優位性につながります。選ぶ理由にならなければ、それは「単なる違い」に過ぎません。
顧客の期待や要望を満たすことが違いの条件
アメリカに食品スーパーのディズニーランドと呼ばれる「スチューレオナルド」があります。同店の入口に置かれたモニュメントには、「Our Policy:私たちの方針」として、次の二つのルールが書かれています。
「ルール1.お客さまは常に正しい」、「ルール2.お客さまが間違っているときはルール1を見直せ」。ここでいう「正しい」とは何か。それは「お客さまは自分を満足させてくれるところを熱烈に支持する」ことです。
差別化も同様です。目指すべき顧客に「この違いが好き」と感じてもらわなければ意味がありません。大事なのは競合でなく、顧客の立場で違いを考えることです。その違いは顧客の期待や要望を満たすことが条件となります。
「競合と競争しない」という選択肢を選ぶ
差別化の目的は競争上の優位性を築き上げることであり、企業にとって重要な課題です。しかし、これは「常に競合と同じ土俵で競争する」ことを意味します。中小企業にとっては、必ずしも有効なシナリオではありません。
考えて欲しいのは「競合と競争しない」という選択肢です。しかし、多くの経営者はその方法がわからないのでこのことを選びません。それでも、前述の通り、差別化が難しくなってきているのは間違いのない事実です。
いま考えなければならないは、価値づくりの目的を「他と比べられても選ばれる価値」から「他と比べられずに、真っ先に選ばれ続ける価値」へシフトすることです。それは「戦わないことを選択したブランディング」です。
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