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[エッセイお仕事小説]銀座東洋物語。

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ホテルは幸せな仕事。二十代半ばで転職し続けたどり着いたホテルは働く人も泊まる人も幸せなホテルだった。著者が経験した仕事をエッセンスに、小説風にまとめました。昭和の仕事の仕方はこん…
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銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の①

銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の①

 「鍵を換えるしかないんですよ」
 そういう声がして振り返ると、バックヤードにたった一つしかないエレベーターの列の後ろにハウスキーピングマスター、邦康さんがいた。彼はバレーボールのプロになるかホテルマンになるか迷った経験を持つ人である。ソフトなハンサムだが、タッパがある姿は威圧感がある。しなやかな筋肉を包んだグレーのスーツのユニフォームの腕がピンと張り詰めているから、いざとなったら泥棒や強盗に向か

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