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小学1年生が天文宇宙検定2級の最年少合格するために全過去問を形態素解析した話〜前編〜

エビデンスを求めて三千里、着太郎です。
天文宇宙検定4級に合格し、2級を受けることにした時の話をまとめました。

前回の話は以下のリンクから。


天文宇宙検定4級合格後

幼稚園年長で天文宇宙検定4級に無事合格した息子。次は3級をと思ったが、せっかくなのでモチベーションの一つとして最年少合格を目指してはどうかと思い、最年少合格者の年齢を調べてみた。

最年少合格者

3級の最年少合格は、息子に天文宇宙検定を勧めるきっかけにもなった大森くんの6歳のようだ。福井新聞の2022年5月5日の記事に「2021年に中学生レベルの天文宇宙検定3級に全国最年少の6歳で合格。」とある。
また、埼玉新聞の2023年2月7日の記事で、第14回3級に7歳で合格した埼玉県の柴田くんが紹介されている。

天文宇宙検定の各種データ

では2級の最年少合格はというと、岡山県の沖本くんを紹介する山陽新聞の2021年3月9日の記事に「受験時に8歳の2級合格は、最年少記録の7歳に次ぐ快挙」とあるので、7歳が最年少のようだ。2020年11月に実施された第10回の「受験者データおよび講評」の記述に「今回は4年ぶりに10歳未満の合格者が出た」とあるので、これが前述の沖本くんと思われる。恐らくその4年前が7歳なのだろうが、そちらは講評やネット記事に情報は見当たらなかった。
また、大分合同新聞の2023年2月15日の記事で、大分県の保木井くんが8歳で2級に合格したことが紹介されている。

1級準1級は2級に合格していないと受験できない。しかも2級合格者が受験しているにもかかわらず合格率が非常に低く激ムズである。

ちなみに4級の最年少合格は、第2回、第9回、第10回に5歳での合格者がそれぞれいることが講評から確認できる。ブログで4級の最年少合格者が4歳と書いている記事もあるが、講評の表には最年少受験者の記載しかないのでおそらくそれの勘違いだろう。

天文宇宙検定2級に向けて

と言うわけで、最年少合格を目指すとなると「3級の6歳」か「2級の7歳」ということになる訳だが、3級では合格しても6歳タイにしかならない上に、今度の1回しかチャンスがない。2級であれば今回失敗しても7歳タイとしてもう一度チャレンジできる。

息子はIQが特別に高いタイプではないので、計算問題や思考問題が多く出ると流石に厳しい。しかし2級の過去問をざっと見る限り、3級に比べても知識の範囲が変わるだけで全体の難易度としてそれほど無理のある内容ではないように見受けられた。むしろ3級は神話や星座などの機械的記憶による暗記が広く要求される分、メンタル的にはきつい。

そこで、前述の理屈を説明した上で、3級ではなく2級の受験をしてみてはどうかと提案してみた。先に3級の公式テキストを読み始めていたこともあり、慎重派の息子は最初は逡巡していたものの、3級合格後に親子受験しようと試験会場で買っておいた2級の公式テキストを見て何とかなりそうと踏んだか、最終的に2級を受験する気になった。

漢字対策

2級合格を目指すことは決まったが、問題は漢字である。4級と3級は振り仮名が振られているが、2級からは振り仮名がない。問題文に出てくる漢字のほとんどが読めない状態である。

ただ、2級も回答方式がマークシートで漢字を書く必要はなく、また幸運なことに当人も路線図で駅名の漢字を読むのが好きだったりと漢字自体への抵抗感はあまりない。従って、読みと意味さえ覚えることができれば何とかなりそうではある。そこでまず、過去問で読めない漢字を片っ端からフラッシュカードにすることにした。

出だしでつまずいてはいけないと、何も考えずにメモカードに手書きしてみたものの、数が多すぎるうえに、親の字もあまり上手ではないこともあり、改めてパソコンで印刷してラミネートにすることにした。

形態素解析

読めない漢字を片っ端から単語カードとして印刷し、ラミネートして、朝の幼稚園バスを待っている間やお風呂場でやったりした。しかし、やはり読めない漢字の数が圧倒的に多い。試験までこの時点で残り5ヶ月くらいで、幼稚園児が高校生レベルの試験の漢字を確実に覚えるには時間的余裕はあまりない。

そこで、効率を上げるために2級の全過去問14回分の問題文920問10万字のテキストを形態素解析して、単語の出現回数を計算して頻出度順にカードを作ることにした。ここでタイトルの回収になる訳だが、当然小学1年生が形態素解析した訳ではない。(やり方さえ教えれば別に難しい作業ではないが)

過去問のPDFファイルは公式サイトからは数回分しか入手できないが、インターネット上の様々なキャッシュを探し回って、どうにか全て揃えることができたのは僥倖だった。

作業としては形態素解析よりもむしろPDFファイルからスプレッドシートにテキストデータをコピーして整理する作業が膨大で苦労した。

天文宇宙検定2級の形態素解析の結果

既にある程度の量を漢字カードで覚え始めていたが、いったん頻出度順のリストにして、息子とチェックして明らかに分かる物を除外することにした。

天文宇宙検定2級の問題文における頻出度順単語チェックリスト
天文宇宙検定2級の問題文における頻出度順単語チェックリスト

この時点で、高頻出の名詞はある程度覚えていたものの、それに比べて形容詞と動詞がほぼ全滅だったのは面白いというか興味深かった。また、上の写真でも分かるとおり「存在」や「影響」などの抽象的な言葉が出てくる。これらをどう教えればいいのか悩んだものの、結局これと言って思いつかず、特に対策はしなかった。ちなみに、チェックした残りの読めない漢字についても、面倒でカード化することはなく、時折一覧で読みを再確認するだけとなった。

過去問のカード化

漢字対策は頻出度順に覚えるので良いとして、マークシート形式とはいえ4級と違って公式テキストを漫然と読むだけでは合格点に達するのは難しい。公式テキストは学校の教科書のような文章中心の作りになっていて、まとめや整理があまりされていない。しかも本文以外のワンポイントなどの文字の小さい情報からも高確率で出題される。そのため、まずは過去問に多く触れてどういった内容や形式で出題されるか出題傾向を掴む必要がある。

4級の時は第12回の過去問を一枚の紙にまとめてラミネートにしたが、文字が小さくなりすぎる、まとめるのに時間がかかる、出題ジャンルがバラバラで知識が集約しづらい、などの問題点があった。そこで今回は1問1カードにラミネートすることにした。

お察しの通り、かなり労力のかかる作業である。A3サイズに4マス×4マス=16マスをつくり、表に問題を、裏に正答と解説を流し込む。それを両面印刷し、カッターで切り分けて、一枚一枚診察券サイズのラミネートフィルムに挟み、ラミネーターに通してラミネートする。

三分の一位で進みが悪くなったため、いったん4級で忌避した iPhone アプリの過去問を購入し、そちらを解いてもらうことで時間を稼いだ。そちらは全920問中221問しか収録されていないが、効率優先でやむなし。ファミリー共有で息子の iPhone でも使えるようにしたかったが、なぜか購入コンテンツが同期反映されなかった。残念。

実は過去問アプリも自前で作ろうと手を出しかけたが、ノーコードでも色々と制約や条件があり、思っていたようには実現しなかった。(一応 AppSheet と Glide でそれぞれ簡単なものは出来たが、実用性に乏しいので諦めた。)

対策テキストの製作

前述の通り公式テキストは非常に教科書的でまとまりに欠け、情報の優劣も適切ではないので、試験対策としては非常に効率が悪い。
手書きでバラバラとまとめても、息子に読ませるには字が汚いのできちんと読めるか怪しい。パソコンで清書するくらいなら Amazon で書籍にしてしまった方が一枚一枚印刷するより安いし製本されていて扱いやすいと、Adobe InDesign で作り始めた。

ただ、残念ながら結局時間が捻出できず、直前にまとめたものを普通に印刷してホチキス留めと相成った。

天文学オリンピック

そうこうしているうちに、2月18日の第2回日本天文学オリンピック予選を迎えてしまった。過去問が公開されていなかったので、少し前の12月18日に受験した日本地学オリンピック一次予選と同じくらいのレベル(高校地学基礎レベル)を想定して申し込んでいた。
まだ漢字対策も完了していなかったので、問題文の読み上げを親が行っても良いか事務局に相談したところ、許可が下りた。

当日は親が問題文を読み上げたが、読んでいる親の自分ですら全く答えが分からず、完全にレベル違いだった。天文宇宙検定2級レベルではさっぱり太刀打ちできず、次の天文学オリンピックの受験は随分先になりそうである。

ちなみに問題文の読み上げ中、集中力が切れたのか息子が何度か肩により掛かってきて、変な声が出そうになって困った。(オンライン受験で監視員の人が見ている)

幼稚園の卒園式と小学校の入学式

気づけば幼稚園児だった息子もついに小学校に入学する時期に。幼稚園とは習慣も雰囲気も違うので、生活に慣れるまでは精神的にも時間的にも余裕はあまりなさそうなので、無理がないように様子を確認しながら学習を見守った。

イベント参加

とはいえ天文宇宙検定2級一色というわけにもいかないので、週末は時折イベントに参加した。
卒園後では、閉館直前の宇宙ミュージアム「TeNQ」、「茨城県自然博物館」、国立天文台三鷹キャンパス定例観望会の現地開催、相模大野でJAXAの「宇宙科学エトセトラ―みんなの宇宙深体験パビリオン―」の講演会、東工大の「ホームカミングデイ」でくらりかの実験教室などに参加した。

試験当日の様子

そんなこんなで直前もあまりまとまった勉強時間が取れないまま迎えた試験当日。結局アプリ開発も Amazon 書籍化も間に合わなかったが、過去問カードは完成したのでひたすらそれをやってその日を迎えることになった。

親子受験として団体申込をしていたが、直前の様子では息子より親の自分の方が合格が怪しい学習状況であった。過去問カードも息子の方が答えられて、自分は怪しいものも少なくなかったし、本当に理解できているか口頭で質問をしてみても正しく返答できていたので、内容自体を理解できているように思えた。

2023年5月28日に開催された第15回天文宇宙検定の東京会場は、高田馬場の早稲田ゼミナールで行われた。

第15回天文宇宙検定の東京会場(早稲田ゼミナール)

4級は10:30から、3級は12:30からだったので、そちらの混雑具合などの様子は分からなかったが、2級・1級は14:30からで、ほどほどの人数だった。
東京会場では1級が51人、2〜4級のいずれかが302人なのが受験番号からうかがい知れた。受験した教室が302番まで席があったので、おそらく2級が302人と思われる。ちなみに第14回も最大303人でほぼ同数。

息子とは受験番号が並びだったので、机を前後して一緒に受験した。過去問カードとまとめノートを持参したが、あまり集中できていないようで、ほとんど役には立たなかった。

父親の自分はペーパーテストなど本当に久しぶりだった。ポケットティッシュを机の上に置いておいたら、カンニング防止のために袋から全て出すように指示があり、今は随分と厳密なのだなと驚かされた。

試験開始時刻も目前に迫り、回答は問題用紙にも書くこと、マークの順序ずれに気をつけること、分かりづらい問題は消去法を使うこと、分からない問題に時間を使わないことなどを注意したが、息子は一度天文宇宙検定4級を受けているので、後は頑張れということで自分の方に集中することに。

試験開始

父親の方が受験番号が前の番号だったため席も前になり、残念ながら受験中の息子の様子は観察できなかった。

さて、実際の試験だが、学習に使用した公式テキストが旧版のものだったため、ヘニエイトラックやO/S境界など、旧版テキストに記載のない問題も何問か出て焦った。しかし半分くらいは過去問と完全に同一か似ている問題だったので、割と自信を持って回答できた。いくつか判断に迷う問題もあったものの、概ね問題なく回答できた。

はてさて、息子の方はどうだったろうか。これまでも地学オリンピック対策に地学の勉強をしていたので、ビッグファイブのO/S境界は覚えていたようだった。試験終了後の様子に悲壮感はなく、本人としては割とできたつもりのようだったが、前回の4級でも余裕のある様子の割に合格ラインギリギリの66点だったので、今回もどうなるのかは分からなそう。

合格していることを期待し、帰り際にグッズの販売会場にて1級公式テキストの『極・宇宙を解く——現代天文学演習』を買って帰宅の途についた。

結果

試験翌日に自己採点した結果、息子は57点だった。合格ラインは70点。残念ながら確実に合格ラインを割っているので、最年少合格の更新はできなかった。それを告げたその日の晩は、風呂場で大泣きだった。

怪しいと思っていた父親の方の自己採点は意外に88点と、大人の集中力と消去法の判断力で、勉強時間の割に悪くない点数だった。ただ、絶対温度を摂氏に変換する単純な問題を思い違いでミスっていたのは少し悔しかった。

今回の結果分析

前述の通り、小学1年生とはいえ理解に問題はなかったように思えたのだが、想像以上に点数が伸びておらず、間違った問題を分析して確認した。

章ごとに正答率を見ると、最初に勉強を始めて一番長い時間を掛けたはずの10章が得点率40%だったのは残念だった。また、3章、4章、8章以外はまんべんなく失点しており、間違った問題の多くが判断問題で消去法の判断が不十分だったことが見て取れた。基本的に知識をそのまま吸収する(インプットする)ことに主眼が置かれていて、間違っていることを判断する能力はまだまだ未発達であることが伺える。

再挑戦

今回の不合格により最年少合格の年齢更新はできなかったものの、「最年少合格者」で書いたとおりまだ最年少タイでの合格は目指せる。いったん休憩して、第16回に再受検して最年少タイを目指す話は次回に持ち越したい。

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