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家具の修理でわかること。

最近の家具の修理より。
椅子のフレームの接合部分がバックリと割れたものです。ほぼ新品なのですが、これはハズレの製品に当たってしまったとしか言えない、お手本のような椅子でした。

椅子の修理
椅子の修理

椅子のフレームの木の部分がダメになる理由は、大きく2種類に分けられます。

  1. ホゾや木が痩せてしまったり、人が乗って斜めに体重をかけたりしたため、ホゾが緩む。
    ある意味、経年劣化であり、仕方のないことです。
    よくある壊れ方としては、接合部分が外れる。

  2. 大量生産で作られる椅子に多いのですが、不適当な木取りによる目切れと接着の甘さ。また組み立て後の木の収縮などで生ずるねじれ。外国で作られていることも多く、船便のコンテナ内の熱さが木の変形の原因になることも。
    そのような状態で荷重が接合部にかかると、すぐには割れないとしても、比較的早期に壊れてしまいます。
    よくある壊れ方としては、接合部付近の木が割れ、結果として接合部が外れる。

椅子のフレームが壊れた場合、その原因次第で修理方法が変わることがあります。
単に見た目を元通りにするのではなく、壊れた原因を取り除くことを優先するためです。

大量に作られる家具においては、木製だと余計に材料自体の均一化もなかなか難しい部分ではあるのですが、木材のロスを最小限に抑えて、見た目が美しく、強度が損なわれない、木取りというのが最重要とも言っていい家具作りの要素です。
これが適切でないと、同じように作られた家具だとしても、耐用年数が大きく変わってきます。

長年、木の椅子の製作や修理をしているので、その経験から学ぶことも多いのですが、その一方で廃棄される椅子を分解するという仕事もたまにあり、そこで得る知見も興味深いものがあります。
飲食店などの椅子が大量廃棄される際には、そのまま捨てるとスペースが大きくなるのと、分別しなきゃならないこともあって、できるだけ分解します。

その分解する時に、同じデザインの同じ木で作られた椅子であっても、まったく強度が違うことがあるのです。
また、たくさんあればあるほど、現場を見ていなくてもどのように配置されていて、日差しがどのように入ってくる店なのか?人気の席はどこなのか?がだいたいわかったりします。これはカフェをやっているので、ちょっとその視点も入っているかもしれませんが。

何個か分解をしていると、これとあれは同じ人が組み立てたな!と接着剤の入れ方やビスの入っている角度など、作った人の癖が出ているのでわかります。
意外かもしれませんが、世界的に有名なあのメーカーだったり、あのデザイナーの椅子であっても、製品をよく見比べてみると個体差があるというか、バラつきがある、と感じているので、価格が高い・安いに関わらず、作っている人の匙加減が影響していると思います。
ここで言うバラつきとは、基本的には製品として十分な要件を満たした上での、細かい作りこみや仕上げなどについてです。

そんな中、たまーに不運が重なってしまったハズレの製品に当たってしまう場合があり、それが初期の不具合につながったりします。

本当は、修理の必要になった椅子を実際に見ないと原因はそれぞれ千差万別なのですが。
ちなみに、上の写真の椅子は背もたれが外れていますが、左右どちらが先に壊れたのか、その理由も実際に見たらわかります。

以上が、先日の家具の修理の際に、お客さまに説明した、同じように使っていたとしても、壊れる椅子と壊れにくい椅子の違いです。
修理をさせていただく時は、できるだけ説明をするのですが、時間的にもなかなか十分な説明ができない場合もあるので、まとめてみました。


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