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ご長寿クイズに見る高齢者社会

 テレビをつけるとよわい80を超えたくらいであろうか(実はもっと上かもしれない。)、高齢の男女が早押しクイズをされていた。

 みんな元気よく、間違い、勘違い、覚え違い、さらには思いついたアイデアを(?)答える。さらさら、正しい解答など答える気がないのか?とこちらが訝しがるほどに、堂に入った間違い解答に、ワイプ画面で出演者が笑い、スタジオがどっと湧いた。

 ああ、これはいつか「高齢者を馬鹿にするのは如何なものか」と話題になった、あの番組の1コーナーだな、と思い当たる。

 クイズを進行するアナウンサーの困惑した顔とともに、辛抱強く何度も繰り返しヒントが与えられるが、間違った答えを、いいや、自分が今言いたいことを、声高に叫ぶ解答者の方々に、日本の社会の縮図を見る。

 近年、定年退職者のうち希望者が再雇用されるようになった。70歳と20歳が一緒に働くとき、時代も知識も生き方も違う中で、お互いにどれだけわかり会えるだろうか。あのテレビのように、時間をかけて意見を交わしすり合わせ、円満な問題解決が出来るだろうか。

 そして、自分を想像する。

 50歳年下の同僚と果たして同じ言葉を話せるのかと。少なくとも、流行語大賞は、全問分かるくらいの語彙力が欲しい。

 近い将来、私も親を介護する日が来るだろう。老いた親と再び生活を共にしながら、このような和やかな時間を過ごすことが出来るだろうか。結論を急いだり、正しさを求めたり、言動を否定してしまわぬように、誰もが笑っている、この楽しいクイズ大会のように、過ごせるのだろうか。その覚悟は出来ているのか。

 ああ、私にはとうてい足りていない。

 笑い声は軽く、私の心は重く、我が家のお茶の間のひとときを撫でていった。

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