おかえり
きみはあまりにも残酷だ。
ぼくの気持ちなんてお構いなしに 強引に手を引っ張って連れ出そうとするから。
きみはよく色んな言葉で褒められているけど
ぜんぜん 優しくないし
ぜんぜん 美しくない。
でも 嫌いになれない。
きみが放つ光は 容赦なくぼくを絶望へと導く。
ぼくが大きな声で泣いていても 誰ひとり気づきやしない。
みんな 自分のことで精いっぱい。
きみがいるからだ。
だから ぼくはきみがいなくなるのを待っている。
きみがいなくなると 夜は遊びに来てくれる。
夜はきみと違って寛大だから
きみが連れてきた沢山の闇を全部吸い込んでくれる。
きみが連れてきた絶望は
夜のおかげで終わりを迎えることができるんだよ。
「ただいま」
返事はない。
きっと ずっと きみがいる限り
返事はない。
いつだってきみのほうが ずっとずっと 強いから。
でも いいんだ。
いつかきみのことを受け入れないと ぼくはしんでしまうから。
だから しんでしまうまえに きみの好きなところを見つけないと。
そうだ。
このまま 月と踊ろう。
そしたらいつの間にか 疲れて寝ているはずだ。
月の隣で眠りに着いたら
きみが迎えにきても 怖くはないさ。
さあ 早く眠ろう。
きみが好きなぼくのまま
きみに会うために。
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