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【映画】クラシコ【YFFFオンラインシアター】

こんばんわ初見です。

この世界には無数のサッカー映画があるのですが、我々が目にできる数は限られています。

そんなサッカー映画を世界中から集めてきて、時には翻訳までして上映してくれるヨコハマ国際フットボール映画祭という神イベントがあり、過去の上映作品が1作600円(72時間レンタル)でネットで見れることになりました。

これを全部見てやろうということをやってます。600円ください。

ちなみに前回は『ZG-だからアウェイはやめられない-』という、クロアチアの激ヤバサポーターがアウェイに乗り込んで暴れまわるお話。


今回は樋本淳監督『クラシコ』(2010年日本)です。厳密にいうとオンラインシアターじゃない。DVD持ってるので。どうでもいい情報ですけど、4年前に『クラシコ』のDVDをAmazonで買ったとき、なぜか二次エロ画集が届いた。以下、映画祭noteより。

信州ダービーの熱源を探る『クラシコ』
YFFFアワード2011 最優秀サポーター賞

サッカーに留まらぬ、歴史的な対立構造を持つレアル・マドリードとFCバルセロナの対戦は「エル・クラシコ」と呼ばれているが、日本にもその名に相応しいライバル関係が存在する。
AC長野パルセイロと松本山雅FCの信州ダービーだ。
その歴史的背景と、サポーターたちの熱き闘いの日々を、一年間にわたって記録したドキュメンタリーである。

カメラ1台で撮影して、自分たちで編集しました感のある映画です。当時の長野と松本は地域リーグのクラブとしては異質なほどの規模ですが、サポーターが片手で数えれるくらいのクラブも出てきて、地域リーグの姿がわかります。けっこう貴重ですよね。

この映画で取り上げられてるのは、共に長野県を本拠地とする松本山雅FCvsAC長野パルセイロの「信州ダービー」です。現在松本はJ2、長野はJ3ですが、当時の両チームは北信越フットボールリーグ(当時実質4部)所属で、JFL(同3部)というアマチュアのトップリーグを目指して戦っていた。(※当時はJ3リーグがなかった。現在はJFLが実質4部、北信越が実質5部に当たる)


信州ダービー、そして映画『クラシコ』には個人的にも思い入れがあります。土曜松本→日曜長野の日程で行ったことあるんですよ。いま所属してるゼミには「旅行の場合は休んでいい。ただし成果を発表すること」みたいな謎ルールがあり、まあ本当にやる人はいないんですけど、ぼくはガチでやりました。

松本山雅が1回J1上がって落ちた頃かな?本がたくさん出てたので、全部買って読んだ。2試合見て帰ってきて、映画『クラシコ』を見て、ゼミで発表しました。当時まだ修士で所属が違ったんですけど、帰ってきてすぐせんせの部屋に押しかけて「これでいけるわ」みたいな感じの話してD進が決まった感じですね。


北信越リーグって何?ちょっと言ってる意味わからんという人は、以下のサイトを見ておくこと。長野県リーグ(都道府県)→北信越リーグ(地域)→JFL(全国)→J3→J2→J1っていう流れですね。

Jリーグ(J1からJ3まで)はプロリーグ(全国リーグ)で、その下はプロアマ混合の社会人リーグになります。JFLが全国リーグで、その下に9つの地域リーグ、47の都道府県リーグがあります。

Jリーグ入りを目指すプロクラブもあれば、昔ながらの実業団クラブ、プロ化は考えていない地域クラブ、大学サッカー部のセカンドチーム(大学と社会人の二重登録はできないので、トップは大学リーグ、セカンドは社会人リーグと分けている)がいる。

県リーグの下のほうになると、趣味で作った草サッカーチームとかもある。みなさんも登録すれば県3部くらいから出れます。リーグ戦は1年に1つしか上がれないからめんどいけど、カップ戦(たぶん知事杯ってやつ)勝ち抜けば天皇杯出れるし、天皇杯優勝すればアジア・チャンピオンズリーグに出れるし、そこでも優勝すればクラブワールドカップに出れます。レアル・マドリードを倒そう。

ちなみに松本山雅は1965年に喫茶店の常連が作ったクラブで、「山雅」は店名だったそうです。当時の喫茶山雅はもう存在しませんが、現在ではクラブが復活させて松本駅の近くで営業しています。


ここから本題ですけど、題材に信州ダービーが選ばれたの、詳しくない人には理解できないと思うんですよ。ダービーいっぱいあるじゃん?ガンバ対セレッソじゃだめなの?って。

でも信州ダービーは異常です。普通なら関係者と数人のサポーターしか見てなくてもおかしくない地域リーグ時代に、観客数6000人超えを記録(J2平均で7000人くらい)。JFL時代には11633人を記録してます。J1でもおかしくない。ちなみにJFLだと1000人超えると相当頑張ってるなって感じ。

松本と長野の関係はサッカーだけに限った話じゃないんですよ。だからアツいし、サポーターで映画が作れる。

長野県内には県庁所在地の長野市と城下町の松本市との間には、歴史的なライバル関係があって、両市を代表するサッカークラブの試合にもそのライバル関係が反映されています。

特に松本市は長野市をめちゃめちゃ憎んでいて、長野なんて口にも出したくないから「長野県」と言わずに「信州」と呼ぶらしい。

もともと両市は別の県だった(明治の廃藩置県のときは300くらいの府県があり、徐々に統合していった)んですけど、松本市は長野県ではなく筑摩県という県の県庁所在地だったそうです。しかし、1876年に筑摩県庁が焼失して、筑摩県ごと長野県に併合されてしまう。この出来事について、松本市民は「長野県による放火」と主張しています。

松本山雅のホームスタジアム・アルウィンは、2002年の日韓W杯でパラグアイの練習場として使われた立派なサッカー専用スタジアムなんですけど、山雅とパルセイロがJFL入りを争うなかで「パルセイロに先を越されたらアルウィンを奪われる」とサポーターのおっちゃんが言ってたのが印象的ですね。県庁の歴史を反映した発言です。すごい。

ちなみにこれは、サッカークラブへの支援が都道府県単位で行われるため、J参入を目指すクラブが2つあった場合、先に行ったほうに予算が集中してしまうという地域サッカーの課題も表しています。その後、山雅もパルセイロもJFL→Jリーグと上がっていき、パルセイロのスタジアムも改修されてめっちゃカッコよくなりました。よかったですね。

映画内でも松本山雅サポの長野市に対するライバル意識は映画のメインテーマで、なかなか激しいのでぜひ見てください。サッカーのライバル関係っていうのは、試合の日にスタジアムでデカイ声出すとかそういうレベルじゃないんですよ。日常に刷り込まれてる。


山雅はとにかく衝撃的ですよ。1回行ってみてほしい。もともとサッカーどころでもなくて、人口20万ちょいで周辺にも都市ないのに、スタジアムが毎試合いっぱいになる。しかも、四方全部がコアなサポーター、逆側のゴール裏にまで応援団がいる。

試合見た帰りのバスで隣のおばちゃんに話しかけられて、山雅トークで盛り上がるなどした(遠征の時は事前にめっちゃ本読んで、選手調べて、チャントも全部覚えてから行ってる)。全国回ってますけど、ガッツリ話しかけられたのは松本山雅とヴィアティン三重だけですね。

実際に松本と長野を行き来してみると「これは別の県だな」って実感します。新幹線停車駅・県庁所在地(小東京みたいな)の長野市と城下町の松本市の見た目の違いもそうなんですけど、そもそも両市は山で隔てられていて、移動手段が限られている。

また行きたいですね。名古屋から特急使わないで、松本山雅の本読みながら、たまに途中下車して道の駅でワイン買って飲んだりして半日かけて北上する。「中津川市?岐阜県入ったの?え、長野市ってどこ?」みたいな体験もあり、あの地域の複雑さを体験できます。


あと、バスで話しかけてきたおばちゃんに「明日はパルセイロ行くんですよ」って言ってみたらけっこう詳しかったので、(おやおや?)ってなって「あれ??パルセイロもけっこう見るんですか???」ってわざと聞いてみたら変な空気になりましたw

あのときの山雅サポのおばちゃん、ごめんよ。元気してる?

残念でした。


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