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一字が和歌の生死を決める

敷島の道があまりに険しくて、難儀しています。

せっかくの雨の季節なので、雨でなにか和歌を詠めないか。
ちょうど、古今和歌集の恋歌を読み進めていたので、こんな歌を作りました。で、「ふられて」の次にくる助詞はなにがいいのか、悶え苦しんでいます。

ふられて 柳にむすぶ 玉の緒の
片糸を持つ 袖は濡れつつ

訳:あの人に振られてしまった。雨に降られた柳にできた水の玉の緒、あの人の命と私の命とを結ぶ糸はほどけてしまって、今は私だけが持っている(まだ思いを捨てきれない)。そんな私の袖は雨だけでなく涙にも濡れている。

ふられ:降られ、振られ
むすぶ→玉の緒→肩糸
雨に濡れる、涙に濡れる
接続助詞「て」+係助詞「は」。順節の確定。ふられてしまったので。

元の歌は「ふられて」「し」でした。

ふられて 柳にむすぶ 玉の緒の
片糸を持つ 袖は濡れつつ
各助詞「て」+副助詞「し」強調の意味。ああ、ふられてしまった。

この強調の助詞「し」。めちゃくちゃ使い勝手が良いので、最近、服用回数が増えていました。表現が凝り固まるため、和歌精神上、好ましくありません。ので、封印しての、「は」を使ってみました。

和歌は、たった一字で意味も深みも変わってしまいます。

和歌という表現手法の肝はなにか。
一言で言うと、助詞をめぐる闘いです。

上記の「ふられて」のあとに、どんな助詞を添えることが考えられるか。以下、思考実験。

ふられて 柳にむすぶ 玉の緒の
片糸を持つ 袖は濡れつつ
終助詞「て」+間投助詞「や」。お、おれ、あの人にふられちゃったよ(テンション高め)→テンションが高いのに、袖は濡れてる(泣いてる)から、歌の読み手、超情緒不安定。文意が成立しなさそう

「や」はたくさんの意味を持つスター助詞なので、取扱注意です。いろんな意味を含ませられる分、粗野に扱うと、手痛いしっぺ返しを受けます。多くの場合、「こいつ、歌、あっさ…」という反応を誘発する地雷助詞でもあります。

ふられてぞ 柳にむすぶ 玉の緒の
片糸を持つ 袖は濡れつつ
係助詞「ぞ」。この歌の場合は「まさか、ということか?」の意味。オレはふられたのか?(なのに、雨に降られてできた雨粒、玉の緒の片糸をオレは持っている。あれ、涙が止まらない)←これはこれでいいな

「や」と双璧をなす、便利屋「ぞ」。とにかく字数に困ったら、ぶちこむ「ぞ」。


歌人の先輩方、どうぞ、つっこんでください。ツッコミどころ満点だと思います。コメント機能ないですけど。自分がひよっこすぎて、クラクラしてます。


ごちそうさまです。


まさかお金が振り込まれることはあるまい、と高を括っているので、サポートされたら、とりあえず「ふぁ!」って叫びます。