三澤寿喜 みさわ・としき ヘンデリアン=ヘンデル大好き人間

ヘンデルはメサイアと調子の良い鍛冶屋くらいしか知られていないことが悔しく、ヘンデルの知…

三澤寿喜 みさわ・としき ヘンデリアン=ヘンデル大好き人間

ヘンデルはメサイアと調子の良い鍛冶屋くらいしか知られていないことが悔しく、ヘンデルの知られざる名曲の紹介・普及をライフワークとして早半世紀。ヘンデル・フェスティバル・ジャパン主宰、元国際ヘンデル協会(ドイツ)理事、北海道教育大学名誉教授。投稿はヘンデルに限らず思いつくままに。

最近の記事

イエスの受難とヘンデルの最期

はじめに 今年もヘンデルの命日、4月14日が近づいてきました。 実は、ヘンデルの最期は教会暦におけるイエスの受難と符号するところでしたが、実際は1日ずれてしまいました。 イエスは4月13日の金曜日に受難し、15日の日曜日に復活しました。 キリスト教の教会歴ではこの受難の金曜日を特別に「聖金曜日」Good Friday、復活の日曜日を「復活祭」Easterと呼びます。 ヘンデルの亡くなった年の教会歴では4月13日はまさに「聖金曜日」で、15日は「復活祭」でした。亡く

    • クリスマスローズとヘンデル

      今、あちこちで「クリスマスローズ」がきれいに咲いていますね(2024年3月中旬現在)。 我が家の庭でもこの時期になると「クリスマスローズ」が花開きます。花が少ないこの時期、庭に彩りを添えてくれる貴重な花ですね。 1.本当は「クリスマスローズ」ではなく「レンテンローズ」!!ところが、今咲いているのはなんと「クリスマスローズ」ではなく、「レンテンローズ」なのだそうです。 確かにクリスマスの時期に咲く正真正銘の「クリスマスローズ」もあります。しかし、日本で一般に広く出回り、こ

      • 延期 小野綾子さん演奏会

        2月2日に予定されていたヘンデルの《時と悟りの勝利》(抜粋)東京公演は小野綾子さんの体調不良により、延期となりました。 大変残念ですが、しっかり静養され、体調回復後の実施を待ちたいと思います。 追記:新しい公演日程が決まりました。    2024年9月27日(金) 新しいチラシが出来上がり次第、ご案内します。 主催者からの正式告知2/2に予定しておりましたイル・メルロ主催小野綾子ソプラノリサイタル ヘンデル作曲オラトリオ「時と悟りの勝利」(抜粋)東京公演は、当人小野綾子

        • 三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ小野綾子さん

          三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ小野綾子さん  オラトリオ《時と悟りの勝利》(抜粋) 2024年2月2日(金)五反田文化センター 音楽ホール 19:00開演 (宮城公演1月28日[土] 名取市文化会館中ホール 14:00開演) 2022年度宮城県芸術選奨新人賞受賞記念 (ヘンデル・フェスティバル・ジャパン後援) 《時と悟りの勝利》(HWV 46a)も、先にご紹介した末吉朋子さんのコンサートと同様、ヘンデルの青年期(イタリア時代初期)の作品です。作曲家としてのヘンデルに

          三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ末吉朋子さん

          三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノの末吉朋子さん 「グローリア」 2024年1月20日(土)sonorium ヘンデル・フェスティバル・ジャパン後援企画 2000年に新しくヘンデル作と認定され、カークビーのCDでも話題沸騰した《グローリア》(HWV deest)を始めとして、器楽伴奏付きカンタータ《棄てられたアルミーダ》(HWV 105)など、ヘンデルの若い頃の作品を中心とした意欲的なプログラム。 《グローリア》も《棄てられたアルミーダ》もともに高い集中力と技巧を要し、ど

          三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ末吉朋子さん

          続・続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その3 城内劇場とバロック演技(ジェスチュアgesture)

          バロック演技(ジェスチュアgesture)オペラが詩、音楽、演技、衣装、舞台効果(背景、照明、機械仕掛け)などを含む総合芸術であることは言うまでもありません。中でも、バロック・オペラにおける詩と音楽と演技の緊密な結びつきは、19世紀以降のオペラに親しんだ我々の想像をはるかに超えています。 バロック時代においてはオペラや演劇などの劇場娯楽における演技はジェスチュアが用いられていました。ジェスチュアとは人間の様々な意志や感情を特定の身振り、手振り、姿勢などで表すものです。ゲー

          続・続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その3 城内劇場とバロック演技(ジェスチュアgesture)

          続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その2 城内バロック劇場の構造

          II 城内バロック劇場の構造前稿でも述べたとおり、チェコは歴史的にオーストリアのハプスブルク家と密接な関わりをもっていましたが、特に南ボヘミアのチェスキー・クルムロフはウィーンとは距離的にも近く、文化的に強い影響を受けていました。このため、1766年に建てられた第2劇場(現在復元された劇場)はその構造から機能、装飾までのすべてが18世紀ウィーンのバロック劇場様式をそのまま留めている点で極めて重要なのです。 場内劇場の基本構造の大枠は下の図面、左から「舞台裏」、「舞台」、「客

          続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その2 城内バロック劇場の構造

          美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ                     ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~    その1 チェスキー・クルムロフ城内バロック劇場の歴史  

          はじめに ボヘミア南部、現在のチェコとオーストリアの国境近くにある古都チェスキー・クルムロフは世界一美しい町として日本人観光客にも大人気ですね。 この町のシンボルとなっている城の一番奥(第5中庭)にはバロック様式で建てられた歌劇場(以下、城内劇場)があり、そこでは毎年国際会議が開かれていました(現在も開催しているかは不明)。 会議の期間中には城内劇場でバロック・オペラが実験上演されました。照明、背景、衣装、演技、機械仕掛け、歌唱、オーケストラもすべてを可能な限りバロック時

          美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ                     ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~    その1 チェスキー・クルムロフ城内バロック劇場の歴史  

          英国王チャールズ3世戴冠式とヘンデル 

          はじめに昨日、2023年5月6日、ロンドン、ウェストミンスター寺院にて英国王チャールズ3世とカミラ王妃の戴冠式が執り行われました。 英国王の戴冠式ではヘンデルの《戴冠式アンセム》の演奏が恒例となっており、今回も演奏されていました。演奏されたのはカンタベリー大司教が新国王に油を塗る(塗油:とゆ)という最も神聖な場面においてでした。 昨夜はテレビ朝日がライヴ中継するとのことで期待して観ていたのですが、現場のライヴ中継はほとんどなく、スタジオでの雑談に終始していました。 このた

          英国王室とヘンデル

          (左からジョージ1世、ジョージ2世、キャロライン王妃) お断り:本稿は第5回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン「英国王室とヘンデル」(2007~2008年)へのプログラム解説「英国王室とヘンデル」の一部を補筆・修正の上、ここに転載しています。 英国王室とヘンデル ヘンデルはイギリスに渡ってから息を引き取るまで、英国王室と親密な関係を保ち続けた。その発端は、渡英以前、ハノーファー選帝侯の宮廷楽長に就任した1710年まで溯る。以下、ヘンデルと関わった王族たちを時系列で紹介す

          自己紹介

          三澤寿喜  みさわ・としき ヘンデル研究と校訂譜の出版や指揮活動を通じてヘンデル作品の紹介・普及に努めています。 2003年からヘンデル・フェスティバル・ジャパン(HFJ)主宰 元国際ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル協会(本拠:ドイツ、ハレ)理事 北海道教育大学名誉教授 ヘンデルが専門ですが、ヘンデル作品をより深く知るためには他の作曲家の作品にも目を通し比較する必要があります。 このため、日常的にはむしろバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデ