かつての少女の冒険の先には。
先日、ADHDの検査のために、都内某所にあるホテルに泊まった。
そこは、ショッピングセンターと地続きになっているホテルで、ともすれば、買い物客が間違えて上がって来てしまう。
そういう場所だ。
かつて、わたしもやったことがある。
中学生のころ、一番上にあるレストランでケーキを買おうと、エレベーターに乗ったところ。
間違えて、その上の階を押していたことに気づかず、扉が開くと、ふかふかの赤い絨毯と、客を迎える盛装したホテルマンが立っていた。
いらっしゃいませ。
と、頭を下げられてから、初めて、自分は間違えてホテルに上がって来てしまったのだと、気が付き、慌ててエレベーターに戻った。
何故か、今でもその日のことを鮮明に思い出すことができる。
そして、先日、検査の前乗りのため、たまたまそのホテルに宿泊する機会を得た。
15年以上前の、あのエレベーターホールから先にある冒険へ、出かける日が、まさか来るとは思っていなかった。
私は、少々胸を躍らせ、かつての少女の手を引きながら、いざ、チェックインへと向かった。
かつての私は、ドキドキしながら、色の変わった絨毯を踏みしめて、部屋へと向かう。
そして、開け放たれた、古い扉の先には、かつて子供だった私には当然手に入らなかった、そういう景色が広がっていた。
少女の冒険の続き。
そう思いながら、煙草をふかし、曇り空が広がる景色を眺めて頬をゆるめた。
一生に一度あるか、ないかの奇跡の先に、私は一歩踏み出したのだろう。
一度でいい。行きたかったその場所へ。
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