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結局ベタなお笑いが一番面白い(2024年8月の観劇記録)

8月は4本の芝居を観た。
夏休み期間は、子どもが楽しめる作品が多く上演されているが、大人が観ても色々な発見があり興味深い。

↑これまでの観劇記録はこちら↑


ふたりのロッテ

何気なくチケットを取った劇団四季のファミリーミュージカル。

可愛らしい世界観の作品かと思いきや、結構ドロドロした話だった笑
夏休みということもあり、劇場には多くの子どもたちが観にきていたが、どういう感想を抱いたか、非常に気になるところ。

というのも、子どもが主役の物語なのに、父親の新しい恋人であるイレーネが異様な存在感を放っている。
一幕のラストで急に出てきたかと思ったら、二幕ではコーラスラインの"The Music and the Mirror" のようなダンスシーンがあったりと、役者としてはとても美味しい役どころだと思う。
基本的に劇団四季(浅利さん)は、王道の演出が多いけれど、時々こういう謎なことがあって、それがまた面白い。(非常に斜めからの楽しみ方だけれど…)

あと、幕開けの林間学校の場面のダンスが、The 加藤敬二!といった感じの振り付けで、素人目からしても大変そうなナンバーだった。
ファミリーミュージカルでこのクオリティが観れるのは、劇団四季の素晴らしさだと思う。

ただ、戯曲としては、やや古い印象は拭えないなと感じた。
父親側の家庭では、家のことはお手伝いさんに任せることで、娘(ルイーゼ)はのびのびと自由奔放に育っている。
対照的に、母親側の娘(ロッテ)は自分で家事をこなすなど、幼いながらに自立を求められているあたりも、観ていてしんどいなと感じた。


キャストでは、ベテラン勢の活躍が目立った。

パルフィー氏役の鈴木涼太さんは、ともすると嫌な性格に見えるキャラクターを、絶妙な塩梅で演じられていた。

ムテジウス校長役の遠藤珠生さんと、アイペルダウワー/シュトローブル博士の2役を演じた川口雄二さんは、客席まで歌声が特に響いてきて、お芝居の面でも舞台を引き締めていた。

2024/08/10 マチネ


ジーザス・クライスト=スーパースター[エルサレム・バージョン]


たまたまタイミングが合い、新潟公演を観劇。
劇団四季で最もリピートして観劇している作品だと思う。

この作品は、自由劇場で観劇することがほとんどなので、ひと回りもふた回りも大きい劇場で観るのは、なんだか変な感じだった。


メインキャストの半分くらいは、これまで観たことがない方だったので、また新しい発見があった。

特に印象的だったのは、マグダラのマリア役の守山ちひろさん。
音域がぴったりで、個人的には高木美果さん以来のしっくり来るキャスティングだなと感じた。
アンナス役は、ずっとワイスさんが演じられてきた印象だけれど、一和洋輔さんもなかなかのハマり具合だった。二枚目の役を演じている印象が強いけれど、こういう役柄も難なくこなせるのはすごい。

新しいユダ役の方は、確かに高音まで難なく出ているものの、まだまだ演じることに精一杯という感じで、所々段取りっぽいお芝居に感じた…。
ラストの”Superstar”の歌唱が一番しっくり来たかな。

シアターオーブで以前上演されたコンサートバージョンの公演もまたぜひ実施してほしいところ。

2024/08/14 マチネ


ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~

今回が再々演。
何だかんだで上演のたびに観ている。

上手く言えないけれど、これまでの初演・再演より湿度の高い芝居といった感じがした。
日本の情感的な部分なのかもしれないが、もう少しカラッとした雰囲気の方がこの作品には合っている気がする。

今回、初めて気が付いたのだが、舞台後方の壁面の上部にNCB(石炭庁)の文字が書かれており、とても象徴的だなと感じた。

キャストでは、ジョージ役が芋洗坂係長さんになったことで、ボクシング教室のシーンの笑いどころが明確になった印象を受けた。
益岡 徹さんのお父さんは、妻を亡くしてから、流されるがまま生きているんだろなといった感じ。息子がバレエをすることも、割と早めの段階から受け入れ始めている雰囲気を感じた。

2024/08/25 マチネ

劇と短歌 飽きてから

「いつ高シリーズ」が有名らしいくらいの知識で、ロロを初観劇。

「劇と短歌」とあるように、「舞台奥のスクリーンにたびたび短歌が投影され、その内容と連動した物語が繰り広げられる」といった流れで進んでいく。
随所に短歌を挟んでくる演劇は初めて観たが、物語自体は「登場人物の一人が家を出て、様々な出来事を経験し、最終的に家に戻ってくる」といったもので、いわゆる「日常→非日常→日常」の流れで構成されたオーソドックスな作り。
物語の運び方が、2月にKAATで上演されていた「三浦半島の人魚姫」と少し似ているなと感じた。

上演時間は80分と(演劇の中では)比較的短く、物語には結構余白があったなという印象。
どちらかというとストーリー云々というより、作品の構造を楽しむ演劇なのかなと感じた。

会場のユーロライブはキャパ200弱の劇場だが、客席降りが頻繁にあることで、劇場空間がより緊密なものになっている感じがした。

キャストでは、客演の上坂あゆ美さんと鈴木ジェロニモさんが、それぞれ存在感を発揮していた。
上坂あゆ美さんは歌人であり、今作で登場する短歌も全て上坂さんの作品だそう。ホームページを拝見する限り、本格的なお芝居をするのは初めてのようだけれど、とてもそうは思えない自然な演技だった。
鈴木ジェロニモさんは、お笑い芸人ということもあり、一番笑いを誘う役どころを演じられていた。なかでも、音楽が鳴り、急に歌い出すシーンは、観客全員が心の中で「お前が歌うんかい!」と突っ込んだと思う。吉本新喜劇ばりのベタベタなお笑いだが、結局こういうベタが一番面白いのかもしれない。

初めてのロロは、ポップな演劇という感じがして、何だか新鮮だった。

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