楽園(フォレスト・ガンプの地球儀) 川柳145句
Ⅰ.偽・日本人霊歌(11.26)
破綻するサイコキネシス避妊室
ステーキの模倣終われよ百回忌
病床に十回クイズ覚え書く
のりたまの永遠に在れ日本ジャズ
卵生の王のひとりに霊歌やみ
芋粥を盗んだままの大リーグ
回文のみかじめ料がとどこおる
駅馬車ともろとも止まる電熱機
ルカーチが海鮮丼にひしがれる
文字の書を隣室で塗る双生児
眼圧が鳥羽法皇に似ていない
Ⅱ.餅を撒く(11.27)
東鳩を考える葦死のなかに
組織へと友部正人の数え唄
尺八の輸入のあとに長い闇
華氏はかるときに聖夜の村田銃
ア太郎がサラダオイルを汲んで冬
雪闇に三井住友とのわかれ
ネクタイをつぶやいているひろさちや
ヘンゼルがグレーテルとの餅を撒く
パラドクス経済学者断線し
地球から胞子を消してエル・サント
契られて大聖堂に置くレタス
ラコステを畏怖する限り茶器を割る
デパ地下を反重力の左官塗り
ジャズメンの油絵裂ける結氷期
人を斬り北京ダックの製造日
救われよ馬ラーメンに長い列
水源を失う馬太豆腐店
造語して伊奈かっぺいをばばりかす
異母兄が彼誰刻に素組みした
県庁が現実界に所在せず
スジャータが襤褸をまとった辰野町
実名の絶滅をする獅子靴屋
めかじきを阿佐田哲也が売ると冬
複製の阿川佐和子の輪唱部
部員減り松の廊下を建て直す
淀川の言葉の限りみそなわす
松島をスロー・ラーナー描き果て
偽眼鏡愛別離苦にピンを刺す
主の胸に今来場所の父と母
無人野に卍固めのひとつ在り
言語野をイヴ・モンタンが覆い冬
世界史がむしろケンタッキーに在り
でぶ専の派閥にブルークリスマス
上皇が磯野カツオを筆写せず
ジョン・ウェイン句会が果ててなにもない
新宿に陥ちる架空の国分寺
散る日本指のかたちのソーセージ
夢枕獏を詠み込む明解句
あぶさんの世界にふえてゆく塩湖
あざなえるラリイ・ニーヴン憑依して
贖罪のプレパラートに胃酸落つ
ボンゴレの遥かな後に涙の日
動機なき犯罪つづくタミヤ都市
論理成る九百人のお祖母さん
一同の夢の木坂のブーイング
蒲田区の讃美歌を弾く開拓者
酢に消える原風景のシーボルト
天婦羅屋パニック映画録画せず
存在がうまれた星に握る箸
濃度上げ伊豆半島の橋幸夫
デイヴィッド・ボウイの助詞のののちから
夜が来る環状線をひとつ消し
寒天を印字する地の聖なるか
可塑性を助六寿司に倒叙する
蠅死ねり吾妻ひでおの半減期
Ⅲ.カントール集合 完結編(11.28)
十戒にトラ・トラ・トラをくり返す
左官らがイヴの総てを言語化し
引力に畜生道のかずみさん
生ハムや珪素生命しぐれれば
大衆の反逆としてハーブ枯れ
喪が明けて足袋工場を脱走す
街道をゆくテクストに青い猫
衝撃の寿がきやが開くパノラマ視
貝塚に視力検査のための貝
トラウマの盆栽ならぶ三次元
リアリティー・ショーに震えるのどちんこ
シーソーに男が消える冬の雨
犯罪者予備軍による目玉焼き
ドレミファのドレミに至る家畜人
着ぶくれるアンチ・ロマンの騾馬棄てて
霊体をラッシャー木村語り出す
ビル結ぶ霊的都市に冬の蠅
胸鰭を隠して冬のアロハシャツ
環の国に幻魔大戦完結す
寒天をプロレスラーが触れるとき
白日に伯林を湯がいて居るか
瓜売りが正気に還る開戦日
三毛猫に延びるブラック・ジョーク集
カントール集合内に雪焼ける
硬筆のスーパーマンの大叙事詩
隠し撮り杏仁豆腐入れて出す
犬笛を吹かなかった日町に闇
音速の寿司屋が去って孵卵する
豆腐から豆腐へ移る日の脳波
日暮里にノウハウ乱れ流れ星
ガス洩れて母艦絡みのくじを引く
タービンの回るさなかに歌舞伎揚げ
揚げ餅と隔絶される動名詞
早朝の不条理日記にも海鼠
漬け麺にひとつの磁針振り切れて
湯がきする戦争機械想うため
早朝に流れる明治大帝記
蟹味噌の星の蟹味噌うばう星
妻愛すモスバーガーのパテ砕き
モッツァレラチーズの声を現象し
紙たばこ刻んでヴァギナ・デンタータ
対称の恐怖の谷に鶴を折る
船盛りに石油会社のジャズ止んで
艦長の艦をうしなうおかひじき
四阿をはみ出す地底探検車
闇鍋のサンプルを採る冒険者
ヒロインの膝いつまでも火星色
蹌踉とヨーダに冬が来た街へ
蒸気噴く朝のSF住宅地
手毬唄金平糖を融かしつつ
野獣派の作戦名が沈む町
回路図を拒むわたしのどんぶらこ
桟橋が落ちるMr.Children
超差別劇画作家にしぐれれば
アルトーの橋梁のない橋渡る
街頭の渡哲也と死別して
宇宙船ビーグル号に古銭置く
風呂屋へと馬頭観音像抱え
どもりつつユープケッチャをあつめる日
十六夜に選球をする湯治客
客体のマリオカートが消え去りぬ
渋滞のコント広げる今川氏
シベ超か富士山麓の白狸
全巻にチキンナゲット点描し
醤油みな虚構のパンチドランカー
小説にたこ八郎のヘリポート
偽の文に胞衣の破ける双羽黒
蟹屋から歩くスポーツ冒険家
殴られ屋撮って冬至の渋谷駅
ブルータス水道橋であったのか
嗅ぎに来る名古屋テレビとトマソンと
モイスチャーミルク先生禊する
たばこ屋が再現された宮内庁
UFOを合成すると御前崎
あやとりのさなか戦車が潰されて
六つ子らが週刊落語立って読む
厭離穢土射的をしないきしめん屋
雨上がり決死隊との長編詩
ミュージカル動画にさぬきうどん打つ
もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、