力道山の忌(The Long Goodbye)　　川柳26句

冒頭にベガのかがやく富士日記

赤錆の野村沙知代の懸垂器

重力の虹の国から邦衛軍

納豆に金星人が六を掛け

たらばがにとの思い出を籠り書く

ペンギンと言葉あやつる由美かおる

新妻がナウマン象を焼くけむり

男性器はずして海老をおびき寄せ

ふと言葉ふと言葉にも花電車

火のなかにラガー刑事の伝書鳩

東京の砂漠に持ってゆくミトン

苔むして硝子以外のものがある

まぐろ社のまぐろを鸚哥つばみつつ

箱船のだれも複写をしなかった

おおひなたごうが剃り込む理髪法

しまむらを出て地球儀の上の町

呪術師がシャウエッセンを再話する

厨房にパンクの居ない冬来たる

春画でも殴られているルー・テーズ

ストーブに音ある部屋の亀を貸し

どつき合うＴＶの平田神学者

雪なかのルパン雑誌の巻頭句

うじ虫とチーズのように喩え合う

アーノルド坊やの滝を落としかえ

島袋寛子が鋳たる五寸釘

皇帝の刺繍がせがた三四郎

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