ペギラの夏（余白） 川柳55句
手毬唄以外のコギト・エルゴ・スム
マタ・ハリがいつか連体詞になる日
螺子をまたすくいどりする記憶山
文法がガダラの豚の巨人軍
木の実ナナ護衛の兵が雹うけて
神の死の余白をたたむ黒揚羽
スティーヴン・キングの髭をわざとそる
マタマタのすべて天動説のなか
七月のゾンビ映画をじっと撮る
煉炭にしょくぱんまんの可能する
稲中に護摩焚かれおり地平線
ぎらぎらと海に名まえをつけあぐね
寂聴と二人で羽織るサッカー部
鯖展にライトノヴェルの題を借り
アンカーのみだれ撃ちする笑茸
ヨブの記を河馬公園にはりつける
淫夢みて象工場のながい午後
マコンドの象形拳をやりなおす
ゴールデン・ガールも消えた禁足地
メスメルの書のひらきかけ刀自の家
自意識がゆらいでゆらぐ蓋祭り
人間とキューバがおなじ舘にたつ
六波羅の大根ぎりにさらされる
胎外にネバーランドの舟ながれ
犀という川を表現するなにか
愚と愚との夜の世界のめしを炊く
七月の異常に脳のとけはじめ
論すすむキング・コングの鼻血から
北斎が電気しかける羊ども
分泌がとまればやっと河馬にあう
フロイトのなかの陸上自衛隊
諸世紀をふまえ夜明けのヴァンパイア
塁審のクローンへって都市国家
牢獄のあぶない刑事に白い蟻
カウンター・カルチャーとして塩こうじ
天どんも月命日もわすれつつ
ビニールにひとがなにかをたてている
狂歌よむそのときまでのポルトガル
日本人靈歌にかえてせらみっく
京セラのありとあらゆる水路涸れ
学生の飛行金閣へのバルス
Ｏ嬢のラジオにまざる金銀歯
古池やるさんちまんの池が澄む
新星座ならずオーラル・ヒストリー
ヒステリーいつの日までも青い山
分裂をしないと砂が砂のまま
法政を妄想系にかぞえつつ
ミシン目に妻病んでおり世にいかれ
いか焼の書きたいことを書くボンベ
氷菓とけ飯田譲治のみなわかれ
負荷としてありうるかぎり倉木麻衣
ちょんまげのアンドロイドに生の価値
げんじつの方程式をカフカ立て
一揆前一揆がつねにはじまらず
マルコフに扮し わたしは痛かった
もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、