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12月30日のフリーマン・ダイソン  川柳80句

1.宇宙塵


山盛りのかみなり豆腐まで宇宙

ソビエトに宇多田ヒカルの真田虫

碁会所の無声映画に発火する

ちゃんぽんのパズル解けざる年の暮れ

トントンを載せない夕陽新聞社

荒地派の太陽系の紙を折る

覆面の作家が彫っている普賢

大陸に秘密結社がつかう井戸

ピラニアに自己最大のせいくらべ

動詞なく雪ふり積もる公団地

ちゃぴおかと書きいちねんを終わらせる

電信器きのう銀行員死せり

舛添が仮想旅団とともに去る

珍盤に超展開の味噌を塗る

時の国まずいフライドポテトの句

バーガー屋箱庭すべて理解して

木耳の虚数そろえる年の暮れ

十二月三十日のフランキー

画廊画に夏樹静子が触れたあと

船外のヨドバシカメラへと帰る

たのきんを売る父親に父の肩

人類の叉焼麺をやりなおす

うつくしい母親と子の蟹の会

シタールをクレーンゲーム中かなで

奏法がわかっていない鍋の店

青空に死を考えるちゃんこ番

贋金の美貌の吉田茂見て

声優がバナナを買っている世紀

管理室まるごと沈む鹹水湖

湖をひろげて義姉が老いてゆく

天和の共産主義者からちくわ

職業が変わってちくま文庫買う

闇の日に山田隆夫の負の空手


2.原子力宇宙船——写真川柳7題


松平健の豆腐がこみ上げる


SFの図録の貝に似た何か


精神が裂けてドリアン切りわけて


無我なりきたいやきくんが遠かった


神殿に幻聴を積む十六茶


ハンドルをはなす生命体に冬


レントゲン写真機で撮る袖ヶ浦


3.彗星への植樹祭

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