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残像(ヒューゴー&ネビュラ)  川柳108句

どうしようもなくくるしい日。ギャグを考えぬく作業に焦り、ジャック・ダニエルズをながしこめば、夜明けははやい。なにをわらえばいい? ひとに笑いを強要するほど暴力的なことはない(わたしは、この文をギャグとして書いている)。田舎町のささやかなジャズフェスティバルに行った。以下には演奏のかたわらでつくった句も混じっている。ただそれだけの、土曜日。




そしてこれは〈書物〉ではない

Ⅰ.成分——白粉、幻影、祝祭  二十七句


性的の意味で氷島われくずれ

人間と機械のあわいわかめふえ

水をしる洗脳中の黒金魚

六月をげそ天を聖杯に盛り

だいこんが意味するものの繭をでる

律法の書のペリカンを撮るあいだ

スカラベが一匹としてみる世界

のど飴の世界おぼえてゆく詩型

詩型また死刑とくらべあう湿り

湿潤を記したミルコ・クロコップ

芋版にバンドブームの反地球

社会主義国旗はためくゴム版画

陰膳と高見恭子をしらないか

吉四六の讃歌にゆれるゆりかもめ

犬屋からサスペンダーをもらうまで

なっとうの死んだ教師を買いしめる

精液がでないヒルコの村抜けて

黒森に自己がひろがりゆく艶話

ナゲットをいつまでめぐる海の会

頭脳との並行をなすあばらぼね

象徴の古谷徹のばかぢから

ナボコフの時間にとまる雨まつり

鳴き砂がこぼれるばかり左右脳

灼けるパイ童夢団地の物自体

オッカムにかかわってゆく蘭と乱

夏至もまたミトコンドリア・イヴの痕

たこ焼も索子もすべて脳のそと

ひととひとがかえる

Ⅱ.大現在の二重底  四十四句


音として三島由紀夫のわさびなす

バタイユをなぞなぞ誤答集に足す

暗合のみどりやまにて水を出す

和音もてカナダの都市のかぞえうた

となり町戦争につたわるみこし

脳漿を象徴しない四季・奈津子

パタリロの遠い太鼓をみはなして

語り手がもうすぐかわる渡月橋

ジャクソンのいちぶに青い本を書く

キャラメルをこわす箱型異星人

水ばしょう宅間守のゾーニング

たい焼がただそこにある批評会

磁気みだれトランポリンをあらわせり

レジをうつ記憶同盟解散し

苔寺の猪木詩集がぬすまれる

わかもとの照明弾をねりなおす

ボクサーにかわる人間革命家

ボクシング・ジムに天皇ただひとり

自慰したし動物園がある上野

アメリカのカフカを想うちゃんこ鍋

印字工ひとりとひとりぬけ参り

砂絵でのグリーン・マイルから唐木

キャピタルに章魚の死なない象徴句

承前の蛾をいれなおす大北京

ただめしとろくろが廻るゆうえんち

軍隊の隠語ばかりでハム焼ける

他我と自我まんが百人一首よむ

北斎がくるう谷間のスナフキン

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