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モンキー・マジック(国家)  川柳108句


Ⅰ.マイナスの笑殺隊  四十二句

砂肝がみつかるときの脳のなか

ひきざんに佐川一政らの奇数

うつし世をささえ聖数奇数のみ

にんにくを炒め誰もが蝶になる

病むひとのあざにテレホンショッキング

茶器そろうコーカソイドのさかなつり

犯罪が非劇としての蛾をとらえ

ブラジルに夜の惑星かたちなす

手妻師に三月の衛星が降る

沼を出る口頭試問また終わり

肝油飲むうつつの母を泣かしめて

老人と歌人が堕ちる針の山

仏像を壊しただようイオンども

南無南無のふえたところに猿を狩る

総合のビリー・ミリガン砂に埋め

北極をTVピープル掘りすすむ

力への意志に鬼ゆり峠越え

猫屋敷幻覚剤を服まぬまま

とりもちをみつめつつ読む日本書紀

消費者の神話につづく鉄仮面

ナポレオン・ソロのふたごがうまれた日

あすが来る柳誌のなかのインド洋

春寒し江夏豊と打つ太鼓

化石する鯛や鮃のシルエット

太陽の王と語らう時系列

あみだくじ猪木詩集にいたるまで

工場にかよいつづける気道絞め

チョムスキーとの雑話する袖車

核の春これから海老を買いにゆく

ローソンのすべて天使の垢を売る

やきとりのタレをさがしにゆく迷路

線審が草迷宮にまかり出て

みな仮定エレベーターに糸を切り

羽根のない男女に雪のおわるころ

百閒のまくらのなかを罵倒せず

メンデルが一日一個くるうなか

血と骨を深読みさせる薔薇ひとつ

ヘリウムを持ち寄るさきの桜餅

麩菓子なしネオ東京に夕陽なし

誤認して小室哲哉が買うルンバ

夢日記大聖天を剥ぐピザ屋

雪解けのきょうもフォントをつくらずに

Ⅱ.ライプニッツに陽は暮れて  二十四句

王朝のアフロヘアからAM波

亜宇宙に時おりみえるたけし城

将軍の隠語に内耳ちぢこまる

架け橋にベリーダンサーあつまって

補足だが海苔弁当も単に在る

老春とハヤシライスの意味を訊く

春の咳左翼雑誌の石を撮る

フェルマーと日景忠男をかさね読む

ホームズを夜の世界に押し出しぬ

手短に軍事政権へと日暮れ

あきゃしゃちゃにゃ横浜高のテレパシー

きじ猫に三角法をつかう春

ノイマンの亀によく似た亀数字

わかれにて候地球上地球

麩菓子屋を円周率とおもい込む

オランダに三色丼の夜来たる

オノデンに石部明の花の乱

地上絵にイングリッドが火遁して

紫の薔薇ちりやまず焼肉屋

宿舎から牙の時代のみずがめ座

ニュートンの切腹中も嘘をつく

狩人のさまよう街に葱姉妹

短詩みなアロンアルファをしぼりだす

垢離室に牛乳夫人おしこめる

Ⅲ.ワールド・イズ・マイン  自由律十四句

酸辣湯失い失い失いマリオワールド

ペヤングから俯瞰する自我の未同一性

本日をもちましてロバチェフスキーの終わりです

ファンロードひとつの意識に対応するみぞれやむ

もろもろのほとけであるのだろう、進化せず猿は

テラバイトの鮫を追想するホリエモンの腋

すでにふる里は遠く焼けおち わたしは(ドムドム)を括弧する

バロウズの猿のすばらしさ、はためいている人魚国の占領旗

ねじきり伎芸天

太郎次郎社へ墜とす

最後の象の小路

甲虫のつどう万里小路を化石に、さらに彼方に

ビーフジャーキー覚醒中の庭に

猿を買ってかえる

Ⅳ.檻を出る  二十八句

磯川が自転車ショーにあらわれる

南島に量り売られる少年絵

蓼科の句集のなかに改造車

すなめりと現地解散してまひる

ミキサー車意識のそとの蠅を追い

我意識と枡と澁澤親王記

わだつみを鸚鵡のために語らしめ

やがて減る佐和子の部屋のグリセリン

死火山を撮る宅浪にかものはし

白亜紀をギロチン前にみて眠れ

やきいか屋一軒もなき星に降り

豚を焼く文芸上の修辞して

ソヴィエトと呟いてなお春の風

東独の漢詩が消える綿の国

プリミティヴ・アートの子機が彫ってある

反吐をしてわたしの外の磨崖仏

月と月ガリガリ君の半ずぼん

三月のなまえの市長犬を抱く

まつり縫うキリマンジャロの雪解けて

東映の雄蕊をもらうさびしいか

脳ひろしケチャップ刑事全歌集

座頭市までの形状記憶する

卵黄がヤマギシズムに割れてゆく

呼吸する鏡屋敷の自我をみて

FMに逆桃太郎くるしめば

いよかんをたびたび想う言語論

納豆の家に転回するバカセ

われと云う蝶の記憶をうちころす


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