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完全自殺マニュアル(五郎とゴロー)  川柳40句

小林が小林のまま核造る

社訓にもドグラ・マグラと書いてある

樹海にも存在しないタメゴロー

六感で共産主義の尺はかる

顎なくす鈴木保奈美の虎の穴

狂っても父のバターを塗りつづけ

キャプションに品詞あらざる写真集

花火師に漸近をするやきうどん

妄想にヤプーが建てているTSUTAYA

時計鳴る動物保護をくり返し

人間が厭になる日のフエキ糊

激突!の反解釈をする父子

三つある三羽烏のブラスター

粘菌を象舎にえぐる暮田真名

令和史の股旅物にナイフ研ぐ

恵那山にコンビ作家の離別する

地名なき倉庫をさがす老夫婦

炸裂の花屋のなかに皮を剥ぐ

概念をひたすら示す土星の環

豆を炒る蠟人形が座る家

夜這いする偽の砂糖をまかれつつ

みまかってしまえば定規余る部屋

ロケットの降りそそぐ視るかまどうま

横審の情報局に無いチーズ

性欲を大平原の位置とする

ロリコンに創造された茶碗蒸し

おおまかの小児愛者を載せ自転

庭広しファンダメンタリストの能

進化論講師死におる日光市

常陸坊海尊が出すハイスコア

喪が明けるレッド・ヘリング高校に

パンの木が消えて三頭支配制

至近から述語を受ける西松屋

しゃぶしゃぶが体言止めに見える巴里

岩海苔の無を月のした書き散らす

痰壺の情報量が多い句だ

ノリスケの悪魔の辞典焚されず

馬肉屋を海と毒薬から選ぶ

豆腐屋に在る豆腐肉体の死よ

精神の死よ火遁術ほどこして


『完全自殺マニュアル』を出す前、駆け出しのライターだった鶴見済が別冊宝島に、「天龍離脱直前の全日本プロレスのリング屋」の体験取材記を書いていた。プロレスに全く興味がなかった鶴見くんだが、苗字が鶴見ってだけで「ゴロー」呼ばわりをされたり(どうせ永源あたりからだ)、三沢タイガーの素顔を見たり、やっぱりと言うか元子さんに怒られたり、と古き良き全日ライフを満喫した模様。それでも最後までプロレスは好きになれなかったらしいゴローボーイだが、そのまんま仲田龍の下でリング組んでたら『完全自殺マニュアル』なんて書くこともなかっただろうに。良くも悪くも。


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #鶴見済

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