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戦前と戦後(ピラミッドパワー)  川柳55句

ゴーリキー・パーク麺棒突き立てて

円環の時間のそとにアロハシャツ

白日にししゃもが消える大伽藍

複写機が小泉今日子複写せず

アグネスの反重力を撮り直す

パーソナル・コンピュータへと羊歯を容れ

市民寝るひとりが「箸」と叫ぶなか

インディアン句集はじまる電子上

エルメスに言語崩壊するだけの

言語社がまだ売っている花の紅

ゾロ目なきニライカナイの整理券

下書きを夏八木総理書いたあと

自叙伝に市外ロッテの位置ばかり

賃高き砂漠の星の美術館

異世界のどこの窓にも夢の島

海老カツを虐待されるマスコット

ピラミッドパワーのなかで胡瓜切る

アフリカ史天にばらまく蜘蛛の糸

自粛明けモーガン・フリーマンの素手

犬喰いの茶房しずかに大都会

酢蛸手にアマゾン河を下るだけ

パナホーム猪木の像を運び入れ

カチコミの記録者も鮎川誠

秋祭りカート・アングル闇に溶け

豚屋前おのれの部位の名を知らず

四次元のポケットに在る酢飯旗

町中に「酢飯あります」翻る

どら焼が根性焼になって昼

ドードーが居ない時間の昼休み

速読すMr.Booの置手紙

うな丼をハインラインの手のなかに

あばらぼね座を見つけだす天文部

現実のホットドックを買いに出る

土浦の土にあらびきハンバーグ

サイエンス・ライターの抱く駝鳥卵

ドルを買う自宅のなかにねりがらし

飛ぶ男あれが皇居の灯のはずだ

溺死者に原初の猿が投げた縄

火で熔けるどちらの意味のロッカーも

円盤が蛤御門通過する

ザイル持ちさてここまでも虚構内

かつおぶし工場の稚魚そして稚魚

イヤミスに付箋全色貼ってある

釘を抜く白鳥麗子にも初秋

落伍者がパンダの穴を遺書に書く

さすまたの記憶で描く超絵本

貸本の氷の世界未完なり

大宇宙にて茶壺しか無い茶壺

いつの日のドン・ジョバンニが切った肉

ソーダ混ぜ反省房に日暮れ無し

はさみ焼自体がはさみ焼に視え

ぽち袋破くオーラル・ヒストリー

風死んで加害者の持つ背番号

文字通りつげ義春の春地獄

鰐おおき下水道にて剥くバナナ


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #僕の村は戦場だった #コロナ回復中

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