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愛の時代(フラジャイル)  川柳112句


Left:意味ながら  五十六句


図と地から編年体の悪あがき

拳銃の町にねそべる山田くん

肝吸いの言うべきことがよくわかる

拘置所に和歌山県の梁ばかり

朝夕焼ただの短詩をよむユング

そしられて耳かきを折る蕪村論

海溝ににどと読まないドラえもん

大車輪畑正憲の大びんた

この世へとへその緒にぎるセレブたち

冷暗の県歌ばかりのもろきゅうり

中央に鹿の料理がわきあがる

都市大にビシソワーズをもってして

霧島の部屋にどうして章魚ばかり

つねならず地雷少年鶏を飼う

ベーゴマのどのかささぎも陸の上

かまやつがかってにハムと思われる

夏のはな大一面に未完の句

塩しょってラジオネームの固めうち

仇討ちのとちゅうに捕っておくみみず

厭な世に和泉式部の油蟬

なわをなうコンピューターが狂わずに

下五までじぶんが駄目なやつだった

皇帝をおかちめんこの色にわけ

百という検屍ばかりの素浪人

八月の仮面浪人たちのへそ

物神のトマトジュースを貸しまくる

火のなかにたらこの像が立っている

この簿記とこの簿記くらべ原爆忌

カスタードプリンとしての生まれかた

養羽剤のみこむまでのダダの裔

社会性映画にかかる糸こんぶ

豚売りがみんなパニック映画みて

たくさんのゴムをもちいた愁嘆場

つまさきが秘境映画に巻きこまれ

概念の蚊をみる東村山市

文体がまったくおなじさかまつげ

ビニールの鯛に文体模写をする

ねじ式にかかわらず粥うまきかな

スクリーン・トーン剥がされ原爆忌

売れ残る鰻のぐわんぐわんかな

にんじんにスピルバーグと云う作家

カーテンを落語協会までひらく

新蕎麦の蕎麦からボディ・スナッチャー

アンフェアの季違い作家柏餅

氷塊をどかしてディック・マードック

塗りわけるはなくそ歌人えかきうた

意味ながらアンディ・フグをとりまいて

ピョン吉を二重言語で言う晩夏

撃鉄を皇太后がおこす宿

小黄猿がつつみかくしたQ太郎

バカボンの精子バンクを倒叙する

欄干をきりとるだけのヨゼフの子

イトマンが漢語字典であるように

時のなか祈ってほしいアルミ箔

川柳の牛が朝陽に横たわる

あたらしい麦レスラーのおべんとう

Right:宇野重吉が立てこもる  五十六句

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