見出し画像

夜の翼・Q(椿説トップガン)  川柳77句


1.象は静かに座っている


象が死ぬだるまおとしの名を残し

鯵売って漫画映画を終わらせる

口答のさい果てに在る写真館

永い日よ仮想ゴルフの球失くし

サボテンを変色させる架空の子

光圀がトランポリンで視る世界

破竹する吉幾三の三と書き

鱏の死がだれの都々逸かを知らず

幻日に秋刀魚映画の嘘予告

工場の骨牌に同じ死が書かれ

予言書のシーニュに死んでゆく鯨

球宴に錆びる地球の海の家

獅子舞の必死のちから樹海出る

施餓鬼するコールタールの見わけかた

形而下の脳と体にドラえもん

盆ちかき仔猫ふとってゆく宇宙

夜の街ラプラスの魔のすくなかり

蔑称のサイコダイブをして真夏

朝の蟬未来のイヴに出すクイズ

断崖の映画監督ちょきを出す

一行にチューダー朝の終わる文

描写なるかなしいことをタコライス


2.地球最後の巌窟王


巌窟にあたまのわるい句を刻む

貝塚を信じなかった佐野量子

字義により新宿御苑焼き払う

磁石手に放送作家集団死

脱獄の YOU TUBER に紫外線

朝焼けてアルゴリズムにぷを使う

牧童が包帯ほどく認知論

イヴの子とともに砕けている波濤

肉欲がきらいだ烏賊の肉みつめ

愛液を量ればコールスロー塔

ハタ坊がいま泳ぎだす意味の海

ピエールの茶会に紅茶認知せず

痴呆して濠のすべてにミドリムシ

ミジンコの教科書を書く酢漬の日

武士消えて緯度への道が濡れている

狩野派がひろがってゆく小銀河

メスメルの箱積み上げる発狂日

発狂の曜日を鮫で確かめる

テンパイが尼のかたちす天の下

ブギウギの間奏に在る誘蛾灯

手に触れる湯川秀樹のブロマイド

目を瞑れ犬の惑星自転する

血の雨がひろ子の塚を浸しつつ

字に書けばコールタールの無い家だ

摩周湖に歌舞音曲の消えたまま

無傷なり悪魔の星のライカ犬

麦茶吐く銀河鉄道不通の日

あぶらげのままのマジック・リアリズム

たい焼を不敗神話のなか棄てる

童貞の噺家とゆく富士樹海

解釈を二重らせんの家にする

綺語として電波を切ったまんじゅう屋

戦車団ばかりが消える四日市

切手摺る意味の上での重力茶


3.茉奈と佳奈とナーガールジュナの大三項


はず押さず広義の意味の茉奈と佳奈

虚構内舞台女優に雷落ちる

まぐあいと時間のなかにパロディウス

星砂をもらううどん粉尽き果てて

果樹園に理力うしなう三上寛

キャラ弁に菊地毅の眉間載せ

発句する意識の外にマヨネーズ

環投げして便所男の夏休み

類推に戸田城聖のギガろくろ

非時間をさだめる芭蕉発句集

狂人の遺書あるごとき食べある記

古池や池田大作状のおと

箱宇宙サンボ浅子の化楽天

対称のままにカゴメの株を買う

原子力発電所から造語して

烏賊死んで読み人知らず句のふえて

彗星がめざす一点レコード屋

烈日の共産制に棲むマリオ

愚者として育つ検事の抱きまくら

止血してドグラ・マグラを空で書く

寿がきやのリンボーダンス終わらざる


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #象は静かに座っている


もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、