犀の寺(ミラノコレクション) 川柳70句
蟹味噌と靴がつぶれてゆく短歌
ヤンデレて偶然世界での刺しゅう
寿がきやにらくだのほかのものがある
潮汁こぼれファースト・コンタクト
父眠る陰謀論のオペレッタ
オムレツをぎゃくに性器とかんがえる
アメリカン・ニュー・シネマでの五厘刈り
約束の地に重曹をふみにじる
サバンナにかかわりをもつ大五郎
天孫の孫の手をおる都市砂漠
未完の句蟹まんじゅうがふえるまま
北極にアンチ巨人の棒立てて
アヲハタがなかった日々のずうとるび
華道家へパンク作家がするとろろ
野うさぎに名づけをしあう二廃人
こんにゃくにオペラハウスの喃語する
フロイトの百葉箱をあけそこね
猿の死後となえる猿のカムチャツカ
複眼にひとつ葵の紋所
いっせいに蠅呼吸する御徒町
ペンションに止まることなき御嶽海
骨法の部屋にマジック・リアリズム
柴犬とヴェルガモットを置き逃げる
醜聞のラジオ体操室に初夏
漢文にかかれたはずのアブラハム
ソビエトにみいだしているサルマタケ
体感に坂田利夫のやぶしらず
きんたまがやぶけてからの犀の園
ラッパーのつねづねおもう離乳食
言語化のできない河馬をつかまえる
発熱に河馬の映画をみてしまう
オーケンが河馬に噛まれるサンドの忌
砂山がかたまりジョルジュ・サンドの忌
三老婆ひとりいっぴき蟹洗う
予言者がつぎつぎとめる素数ゴマ
カツ丼が池田大作だとしんじ
天の河天皇制に子を愛す
指宿に4の字固めときながら
電波芸つかう大星由良之助
無頼派がTシャツたたむ犀の寺
映像の世紀に村田はつ子かな
海道の模型すべてにながい午後
フィリップ・ディックの裂いたいか宇宙
客のない客間にすわるヴォネガット
原本のあらゆるかぎりレムの犠打
うつし世に天丼屋から電波の子
かぼす屋に焚書なりたつアリス国
夏場所にいちばんちかい古本屋
祖国すて豚テキを豚テキという
梅干しをきくまましるすミレニアム
梅雨をまつもうしわけないハンバーグ
喪が明ける無法地帯の藻のとおり
白鳥の要塞をでる稚児と季語
巨大なるあごのおとこの溺れ谷
脳痛む比喩の世界の相撲界
エッシャーや全身麻酔する俳句
時間屋をアンディ・フグとおもう夏
初夏すぎてサミュエル・ホイの六分儀
義父の名をわすれたままの土俵入り
みつめれば畸人店長ところてん
ウッチャンにナンチャンがいる準世界
帰宅部の直線をひくあれちうり
カネックが妻の卵子のかたちなす
ぎざぎざの屋台でてゆく岸惠子
銃も詩も茶もにんげんにむすびつく
おむすびをもらいデリダの手術痕
雄山がとどをもとめるユートピア
あきる野市だんだんふえる裸馬の部屋
あぶさんの街に不安の像ならぶ
しそ祭りコネチカットとつぶやけば
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