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週刊web川柳  非情城市vol.00.4

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日曜更新。一週間の川柳です。今回は全6連作。「変」を味わいたい方、どうぞ。
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記事一覧

資本論  川柳28句

資本論  川柳28句

波田陽区合掌造り破壊後の

にんじんに自我たくさんの朝の霧

放浪記つぎの町にも水蜥蜴

ベルーナの弱点を書く雀鬼ども

公園に吾妻ひでおの永遠の雪

海蛇をコンゴ情勢により飼う

谷啓に反応しないあるまじろ

しんがりの魚拓がコートジボアール

父の群れ面相筆を折りに来た

丸ノ内ビルのぶんだけ形而上

ガジュマルに調整される錆びた水

便利屋がコーラを持たず夕陽荘

「美容院マリヤ」の漫画欠巻

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三国志  川柳31句

三国志  川柳31句

一、両棲類の国飛ぶ夢の牛の角度に謀られ

マカ茶からつねに犯罪文学史

普及版クララがごぼう断ち切りぬ

イソップに袖を与える未来人

うろこ屋にパンク将棋の第一夜

釘とファと秘書と両棲類の国

異父兄の奇声水産学部超え

七曲署に尽き果てたガスレンジ

あしびきをプロが現在形で書く

田園に死すそれぞれのガッチャマン

二、加藤茶の国加藤茶の特色としてほたるいか

雨が雨のまま京都のフラメンコ

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昆虫記  川柳23句

昆虫記  川柳23句

箪笥ごと落としたアート・ブレイキー

性欲がソフトクリーム音をして

蟬の図をロケットに貼る偽航士

募金なら終わったはずだ大瀑布

昼の火事だれもがからし錬る時刻

言語野に午後はじまりぬ麩と麩菓子

さすまたの平均的な盗られかた

バカボンに臨終図鑑わたすママ

人間のチョコをあらわす昆虫記

そばがきが在って狂人だと思う

時涯て捨子現場にビル建てり

卵塔場からモニターに応募する

年別に

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維摩経  川柳23句

維摩経  川柳23句

アウトドア雑誌にも無い維摩経

三鷹市にしばられている読者群

覆面でまなぶ排球考古学

吉野家の影のかたちの幼稚園

架空での故郷滅亡するばかり

火曜日の北極星をリカと呼ぶ

樹が在った鱒をおそれている年も

園長の写真のごとくジャン・ギャバン

明日の明日ジャングルジムを逃亡す

メートルの限り南北朝時代

坪庭に電送されたカミュの忌

他者もとめ明治バベルの塔曲がる

もじでしかない〈それ

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青色本  川柳21句

青色本  川柳21句

義妹から茶釜主義者の書を借りて

朝まだき病院船にふえる鍵

ぶんか社に冬がはじまる自転軸

パーマンの指定席から林檎投げ

書記官の脳にナウマン象が居る

歯列からビバリーヒルズ・コップの記

T中で目撃されたリノリウム

連弾で馬を愛せと説く五人

社員用手裏剣に付くメメクラゲ

ケンが居た音楽祭で刺す画鋲

症例の一つにきびを吐き出しぬ

歯を贈るヨガを嫌っている子へと

大会にクロポトキン

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金枝篇  川柳21句

金枝篇  川柳21句

作動する緒方恵美の心臓部

後頭部だがと書かれた以後粒子

関所にも海王星がある暮らし

羽賀研二という試合に意味がない

鰻塚うな夫の名もて『乱』を借り

品書きに未来の国のいわし缶

白い町ビフィズス菌へ祝詞向け

再演に光線銃を海とする

樹海へとポメラニアンのきよき脚

受像機の力よ朝のねりがらし

庶務二課へフレーズのない巴投げ

移動する都市のガリレオ幼稚園

少年に現実の水爆が在る

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