ショートショート『三つの願い』
(雑記)今回の新作ショートショートとは関係ないのですが、チャットGPではついにほぼ人のような対話ができるようになったとのこと。SFの未来はもうすぐにも到来しそうですね。
AI推進派の私ですが、映画、音楽、人との交流においては、本物の人を大事にしたいと思います。めんどうくさいことも多々ありますが、それがまたいいのであって、葛藤、迷い、寂しさ、怒り、だからこその喜びとぬくもりが生まれます。
自分の思う通りになる関係なんて、創造的ではないと思います。
相手は奴隷ではないのです。
おなじ立場で、性別も関係なく、おたがいの異なる個性がぶつけあうことで、思いもしていなかったものが生まれる、そう私は思います。ですので、今回はあえて古ーいテーマのショートショートを書いてみました。
ショートショート『三つの願い』
男は定年退職をしてから、なぜか骨董に興味を抱くようになり、今日も馴染みの骨董店にやってきた。結婚をしなかったため、趣味にかけるお金も自由だった。
店内は薄暗く、歴史を感じさせるものが多く陳列されている。
店主の頭髪は真っ白で、黒縁のメガネをかけ、アロハシャツという身なりをしていた。
男が来店しても、店主はあいさつすらしてこない。
陳列されていた骨董をみていたら、とっくり型のような壺に惹かれた。
手持ちのお金で支払いし、家に帰って、白い布でふいていると、突然、子供の頃にみたアニメにでてきたような魔神らしきものがあらわれたのだった。
アニメでは、魔法のランプから魔神がでてきたのだが、壺からもでてくるのは珍しい。
それはともかく、アニメでもあったように、魔神はみっつの願いを叶えようと言ってきた。
アニメにはなかったが、魔神は古そうな時計らしきものをみて、3分たったら壺に戻るのだと言う。
好奇心で、
「壺にはどのくらいの間、いたのですか? 退屈ではないのですか?」
と尋ねると、
「そんなことを聞いてくる男ははじめてだ。よろしい。時間を少し延長して話してあげよう。わしは、神さまの言いつけを守らず、いくつかのタブーを犯し、人々の願いを一千回叶えるという罰を受けて、我々の世界の牢獄に入れられて千年くらいはたっているだろう。そして、壺を白い布でふいた者のまえにあらわれて、願いを叶えることになったのだ。正確には壺は牢獄から移動するためのものだ。なかなか白い布でふく者がいないものでな。久しぶりで腕がなるわい」
男は時間も気になり、まずは山のようなお金を願い出た。
すると、六畳の部屋いっぱいに古いお金があふれ、窒息しそうになり、
「もう充分です。止めてください!」と叫んだ。
「よろしい、これでふたつの願いは叶えた。
よくありがちな展開だが、男は冷静になって考えた。こんなどこの国のお金だかわからないものではどうにもならない。どこかで高く売れる可能性もあるが、現代のお金のほうがいい。
「魔神さま。それでは、この山のようなお金を現代のお金に換えてください」と頼んだ。
すると、山のようなお金が千円札一枚となり、部屋でひらりひらりと落ちてきた。
長い年数のなかで、インフレのためなのか、お金の価値が暴落していたようだ。
魔神はニヤリと笑うと、「金銀や宝石を願えばよかったのだ」と、意地の悪いことを言いつつ、壺に吸い込まれていった。
(fin)
星谷光洋MUSIC Ω『JUNKのオリジナルソング・愛ある世界』