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ショートショート『真実を映す鏡』実話……ではありません💦

友人でYouTuberをしている男から、とある都市伝説を聞いた。
とあるお寺にある鏡に、自分の真実の姿が映るというのだ。

好奇心がおさえきれなくなった俺は、教えてもらったお寺にいってみた。
お寺のすぐ近くには、新しい住宅がいくつか建てられている。
公園の砂場のなかに、お寺を真ん中にして、積み木のような建物が建てられている、そんな感じだ。
浅草寺に参詣したときとはちがい、なにか気持ちが落ち着かないし、気分もよくない。

友人の話では、檀家も年々少なくなり、経済的な理由で、境内の樹木を伐採し、その土地を売ったらしい。管理費を支払わず連絡もとれない人のお墓も処分したとも話していた。

お寺に行き、本堂とは別にある住まいであろう家のチャイムを鳴らすと、三十代くらいの僧侶が出てきて、鏡の話をすると、その鏡は『真実を映す鏡』と呼ばれていて、その人の本性が映るという鏡なのだそうだ。

呪いなのか魔法なのか、それともほんとうに神仏の御業というものなのか。
僧侶ですら、その鏡をみたことがないという。

その鏡は白い布でおおわれていた。
僧侶は遠くから私を見守っていた。どうやら、近くに寄るのも怖いようだ。
そして、俺は勢いよくその白い布を取り去った。

円形で、真っ黒なふちどりのデザイン。ふちには龍らしき彫り物がみえた。しかしあるのは鏡の枠だけで、鏡そのものはなく、汚い字の文字が書いてあるだけだった。
“バーカ。そんな鏡なんてあるわけねーだろ。冗談を真に受けやがって”と。

私はその枠だけの鏡を持ち、僧侶にみせた。

すると、僧侶ははひざまずき、両手をあわせてぶるぶると震え、読経しはじめた。
俺がその鏡を改めてみると、僧侶が悪魔の姿として映っていたのだ。

僧侶の本性が悪魔なのか、悪魔が見せた幻なのか、それとも神仏の怒り、戒めなのかもしれないが、それは俺にはわからない。 

           (fin)

星谷光洋MUSIC Ω『スターダスト』


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