マガジンのカバー画像

掌編小説

13
【無料マガジン】 私の書いた掌編小説を収録していきます。
運営しているクリエイター

#ホラー小説

赤ワイン

赤ワイン

 山の手の人間が下々の生活に疎いとは言っても、こんな路地裏に在るようなうらびれた酒場の卓上へ大金袋を無造作に出すなんていうのは、あまりに軽率過ぎる行為だ。そうでなくても、この安酒提供場には臑に傷をもつような輩が平然と出入りしているのだから。人目に留まらぬ奥隅の席へ陣取っているとはいえ、気が気ではない。

 私は目の前に差し出された報酬を、そそくさと隠すように懐へと仕舞い込んだ。
「それで、御話を聞

もっとみる