見出し画像

これだからこの仕事は辞めらんない|明石ボイストレーニング・ボーカルスクール

ボイストレーナーの仕事というのは、非常に奥深い。

生徒の見えてる部分と見えない部分の身体と声から自分の目と耳を駆使して

何が改善点なのか、
エラーは何でなぜそれが起こっているのか、
どうすれば解決できるのか、

なるべく早く瞬時に判断して、解決策を提示してあげる必要がある。

だからボイストレーナーは分析上手になる必要があると私は思っている。

感覚派もいるかもしれないが
生徒の分析はもちろん、
売れている・流行っているアーティストさんの分析も私にとっては欠かせないことの一つ。

そして、歌は心・技・体全てが一つで繋がっているので、メンタルケアも大事になってくる。

何ならその人の性格や気性、普段の生活習慣、今感じてること、全てが生物(なまもの)である歌に表われて出てくる。

だから勉強してきた、スキル・技術を磨いてきたと思っても満足することはないし、

自分はまだまだだ、もっと足りないと
絶望することも何度もある。


そんな中で一つでも報われる瞬間があるだけで、

「あぁ、やっぱこの仕事やってきて本当に良かった」

ってジーンと胸が熱くなって、何とも言えない幸せな気持ちになれて、また頑張ることができる。


今日は、そんな自分へのご褒美を貰えたような日だった。


私は普段、大阪にある専門学校で歌の授業を担当している。


だいたい1クラス5〜30人くらいのクラスだが、

去年一年間教えていたとある1年生のクラスは、始業当初は5人いたクラスだったがだんだん人数が減っていき、最終的に生徒は1人になった。


その当時は私自身、専門学校で定期的にクラスを担当した経験が初めてだったため、自分にとっても少しチャレンジングな年だった。

それまで専門学校ではたまに入る代講や代打でしか授業に入ったことがなく、長期的に一定の生徒を担当するということは初めてだったため、

手探りながら何が正しいのかどうかも分からず、その時できる精一杯の判断で生徒と関わっていた。


ボイストレーナー歴としては3年目だったためレッスン経験は場数を踏んでいたと思うが、それまで関わってきた生徒さんは年齢層が幅広く、ほとんどが社会人の方なのに対して、

専門学校の生徒は16〜22辺りの年齢層になるため、先生が与える影響は良くも悪くも大きいと思っていた。


そんな中で担当していたクラスの生徒が最終的に1人になり、授業は実質マンツーマン。

しかも、1コマ90分の授業が連続2コマあったため、毎週マンツーマンで3時間の授業。


正直、どうしようかと思った。


マンツーマンのレッスンは個人スクールで慣れていたが、3時間、しかも毎週あるというのは初めてだった。


でも、生徒にとっては大切な授業だし、せっかくのマンツーマンだし、絶対に成長させてあげたい。
ちゃんと向き合おうと、毎回授業前に気合を入れて臨んでいた。


ボイストレーナーの仕事というのは、五感を全てフル動員して全身全霊で見極めるような仕事のため、ものすごくエネルギーを消費する。

特にマンツーマンで3時間となると、より根気と体力が必要になる。


その子には、せっかくの機会だからと思って一つ一つ細かいところも教えて、調整をした。



彼女の涙は数え切れないくらい見た。

そしてメンタルが極限まで落ちていた時は、
一緒に悩んだり

時に、歌とは全く関係ないような
ノートに自分の気持ちを書き出してもらうワークをしたり、
家庭の相談に乗ったりすることもあった。

また時には、彼女の成長と目指す姿に必要なことだと思った時には、心を鬼にして彼女に酷な挑戦をさせたこともあった。


さらに、時には
ずっとクラスに1人で授業を受けていると何のために頑張ってるのか見失う時もあるだろうということで、

2年生の先輩たち(担当していた生徒たち)に助っ人として彼女に刺激を与えてもらおうと授業に参加しに来てもらって、

みんなで一緒にエアーバンドごっこしたり(笑)

やたらハイテンションなゴスペルを歌って踊ったり(笑)

フェイクバトルしたり(笑)

私も一緒になって、みんなと純粋に音楽を楽しむような授業をしたこともあった。

懐かしいな〜。笑


彼女は本当に一生懸命、真っ直ぐに目の前のことに取り組んで、自分に負けずに頑張って
どんなにメンタルが落ちていても休まずに学校にちゃんと来ていた子だったから、

結果、努力がちゃんと身を結んで、最後は私自身も感動するくらい、めちゃめちゃ成長していた。


これからの彼女の活躍が楽しみだなと思った2年生に上がった頃に彼女は東京の校舎に移籍し上京したため、

卒業までは見届けられないまま私は大阪に残り、彼女の担当授業は終了した。


彼女が東京に行って新年度が始まって、また新たなクラスを担当するようになってからも、時々彼女のことを思い出すことがあった。

元気にしてるかな、

また更に成長してるのかな、

東京で頑張ってるかな、

メンタル大丈夫かな、

まぁでも彼女ならきっと乗り越えてるだろうな。


その後の彼女の進捗を気になりつつも、新たに担当しているクラスもあるため、日々目の前の生徒に向き合っていたある日。

彼女と1年次から仲が良かった生徒が担当クラスに居て、その生徒から彼女と最近ご飯に行ったという話を聞いた。


「先生の話してましたよ〜!

一番好きな先生って言ってました!」


恐らくその子は何気なくしてくれた世間話だったと思うが、私からすると今にでも泣き出してしまいそうなくらい、本当に嬉しい言葉だった。


直接彼女から聞けたらもちろん嬉しかったかもしれないが、人伝いで聞くとよりリアルな感じがあって、本当に、嬉しかった。


手探りの中で精一杯向き合っていたつもりだったが、

ちゃんと伝わっていたんだ…!

ということが嬉しくて、

胸がジーンとなった。


この仕事は、そういった瞬間がふとした時に訪れる。


そしてその度に、何とも言えない温かな感動に包まれて、本当に心の底から「この仕事をやってきて良かった」って思える。


そうやって生徒と心と心で繋がれたと感じた時、

人と人として繋がった時に、

何とも言えない幸福感が、この仕事にはある。


だから、大変なことや苦しいことはもちろんあるが、不思議と「辞めたい」と思ったことは一度もない。


それくらい、このボイストレーナーという仕事に誇りを持っている。


これからもそんな生徒との繋がりを沢山作っていけたらいいな、育んでいきたいな、と思いつつ、

そんな初心の頃の気持ちや、
日々大変なこと苦しいことの中でも
上述のようなかけがえのない時間があったことを思い出せるためにも、

こういうことがある度にちゃんと書き留めていきたいなと思う。


そして、これまで担当した生徒、そしてこれから出逢うであろう生徒に恥じないよう
ボイストレーナーとしての技術・スキルはもちろん、

人としての人間性ももっともっと磨いていかないといけないし、もっと成長しようと改めて強く思った。


はぁ〜…、この仕事、大好きだわ、ほんと!笑


ほんとに、毎回の授業が
かけがえのない思い出だし、

そう思わせてくれる生徒たちに
心から感謝。


個人的で超自己満な備忘録でしたが、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?